理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-004
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理学療法基礎系
荷重量を用いた追跡運動課題時の下肢筋群の活動について
廣瀬 利彦水鳥 武蔵戸塚 満久笠原 敏史
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抄録

【目的】バランスにおいて筋活動は重要な役割を担う.運動制御に関する研究の多くは他動的な床面移動の外乱刺激やload release taskが用いられている.しかし、これらの運動課題では連続して変化する環境下での筋や関節の制御を理解するには限界がある.1993年Dietzらが正弦波を用いた運動課題で下肢筋や体幹筋の筋活動を記録しているが、運動課題との関係についての詳細な解析分析は行なわれていない.本研究では正弦波と荷重量を用いた追跡運動課題での下肢の筋活動の様相を調べることを目的とする.

【方法】対象は健常若年男女各3名(平均年齢22±1歳、平均身長163±15cm、
平均体重55±10kg).なお、本研究は本学に設置されている倫理委員会の承認を得ており、被検者は書面をもって十分な説明を受け、実験に参加した.測定筋は表面筋電図計を用いて右下肢筋の大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、外側(HL)及び内側(HM)ハムストリングス、前脛骨筋(TA)、腓腹筋外側頭(GAS)の計6筋とした.電極の位置はBasmajianらに基づいて決定した.バンドフィルター10-300Hz、サンプリングレート1KHzで収集し、得られた筋活動のデータを整流化した.被検者は目の高さに設置されたディスプレイを見ながら、裸足で床反力計に右脚で立つ.画面に正弦波状に上下に動く目標と右脚の荷重量を同時に映し出し、自分の右脚の荷重量を前後(AP)または内外側(ML)方向に調節し、目標を円滑に追跡するよう被検者に指示した.目標の運動は50N及び被検者の体重の1/3N、周波数は0.1、0.25、0.5Hzとした.本課題を10周期以上繰り返し行い、最初を除く10周期の平均を求めた.目標の運動は50N及び被検者の体重の1/3N、周波数は0.1、0.25、0.5Hzとした.目標の運動と筋活動の活動時期について比較した.


【結果】両課題とも筋活動は加重量および周波数が大きくなるにつれ増大していた.AP方向では加重時にRF、VM、HL、TA、GASに著明な筋活動がみられていたが、HMは減重時に活動していた.ML方向ではRFとVMに持続的な活動がみられ、HLはHMに比べより減重時に、TA及びGASは加重時で活動する傾向であった.

【考察】AP課題でも転倒防止のため若干の歩隔を確保しているため、左右方向の重心移動が可能である.したがって、内側と外側のハムストリングスの筋活動時期の違いは左右方向の重心の移動によって引き起こされた可能性がある.本研究で測定した筋は主として矢状面上の運動時に働くため、ML課題では明確な変化がみられなかった可能性があり、今後は内外転筋群を測定する必要がある.本研究では対側下肢の筋群を測定していないが、減重時は対側下肢への荷重量が増大するため、代わって対側下肢筋の活動が増大していると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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