理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-005
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理学療法基礎系
前足部への刺激が立位安定性に及ぼす影響
下沢 祐貴三浦 雅史
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抄録

【目的】立位で体性感覚情報を収集する場合、唯一床面と接する足底からの情報入力が重要視され、立位安定性に深く関わっていることが知られている.身体外部からの情報を収集するメカノレセプターは足底に多数存在するが、特に足趾のメカノレセプター分布密度が高いと報告されている.これらの報告から立位時の体性感覚情報は前足部からのフィードバックが重要だと考えられる.本研究では、日常生活で使用でき、かつ前足部への刺激を増大すると予測されるソックス等が重心動揺に与える影響について検討した.
【方法】対象は健常な大学生15名(男性10名、女性5名)とした.対象者には事前に実験内容の説明と対象者の有する権利についての説明を十分に行い、同意を得た.
測定条件は裸足、紐による母指・示指間への刺激(以下紐)、通常のソックス(以下ソックス)、5本指ソックス(以下5本指)とした.紐による母指・示指間への刺激は、草履における鼻緒の役割を紐で代用したものであり、足関節中間位にて母指・示指間に紐を通した.
重心動揺の計測にはアニマ社製グラビコーダGS3000を使用した.重心動揺の測定肢位は閉眼片脚立位で測定した.上肢を下垂した状態で計測を開始し、測定中の肢位は任意とした.反対側の下肢は股関節中間位、膝関節屈曲位で挙上し、片脚立位保持中は測定肢に触れないように指示した.計測は各条件につき左右両側でそれぞれ5回ずつ計測し、3~5回目の左右の平均値をデータとして採用した.各条件の測定順序は無作為とした.測定時間は30 秒とし、不安定な初期応答を除くために、片脚となってから10秒後に計測を開始した.1回の測定ごとに1分間の休憩をはさみ、疲労に配慮した.使用したデータは外周面積および総軌跡長とした.統計処理は裸足と紐の比較、ソックスと5本指の比較についてそれぞれpaired-t検定を行った.有意水準を5%未満とした.
【結果とまとめ】重心動揺計測の結果、裸足と紐を比較したところ、外周面積、総軌跡長で有意差が認められなかった.一方、ソックスと5本指を比較したところ、5本指で外周面積、総軌跡長が有意に減少した(p<0.05).
以上の結果から、紐による刺激と5本指ソックスの間には、前足部に対する刺激量の差があるのではないかと考えた.紐による刺激は母指・示指間のみであったのに対し、5本指ソックスは足趾間全体を刺激しているものと考えられる.本研究では具体的にどの程度の刺激が立位安定性に影響を及ぼすかまでは断定できないが、刺激する範囲によって体性感覚情報を得られる量が異なるのではないかと推察される.本研究では5本指ソックスの着用が前足部への刺激量を増加させ、結果的に体性感覚情報を増加させることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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