理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-050
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理学療法基礎系
荷重位でのスクリューホームムーブメントと大腿骨前捻角度の関係性
長谷川 由理石井 慎一郎
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抄録
【目的】膝関節のスクリューホームムーブメント(以下SHM)に関する研究は非荷重位のものが多く、荷重位でSHMの動態を調べた報告は少ない.荷重位の膝関節の運動は非荷重位に比べ股関節や足関節からの運動連鎖の影響を受けやすく、大腿骨と脛骨どちらの運動がSHMを作り出しているのかという点が議論される必要がある.本研究では、大腿骨前捻角度(以下FNA)が荷重位における膝関節伸展運動中のSHMに及ぼす影響を調べる目的で、膝関節回旋運動を大腿骨と脛骨の回旋運動とに分割して分析を行った.
【方法】対象は、本研究の目的および方法について説明し同意を得られた成人男性9名、女性15名の計24名とした.FNAの計測は Craing testにて測定した.計測課題は立位から膝関節を約90°屈曲させ再び立位へと戻る動作とした.三次元動作解析装置VICON612(VICON-PEAK社製)を使用し、赤外線反射標点を所定の位置に貼り付け、動作中の標点位置を計測した.関節角度の算出はオイラー角を用いて膝関節屈伸角度、大腿骨回旋角度、脛骨回旋角度を求め、さらに大腿骨と脛骨の相対的回旋角度(膝関節回旋角度)を算出した.角度の算出にはVICON Body Builderを使用した.分析は各被験者の膝関節屈曲60°~最終伸展位における大腿骨、脛骨、膝関節の回旋角度を調べ、FNAと大腿骨、脛骨、膝関節の回旋角度をPearsonの相関係数を用いて検討した.統計学的有意水準は危険率p<0.05とした.
【結果】膝関節伸展時全ての被験者で膝関節は外旋し、SHMが生じた.大腿骨回旋角度は外旋する被験者と内旋する被験者に分かれ、外旋する被験者群のFNA平均は8.4±2.51°であり、内旋する被験者群のFNA平均は16.16±6.2°と、両群間で有意差が認められた(p<0.05).一方、脛骨は全ての被験者で外旋した.FNAと各回旋角度の関係は、FNAと大腿骨回旋角度との間で正の相関が認められ(r=0.54 p<0.01)、またFNAと膝関節回旋角度にも正の相関が認められた(r=0.56 p<0.01).一方、FNAと脛骨回旋角度は相関が認められなかった(r=-0.21).
【考察】過度のFNAは大腿骨頭中心が寛骨臼中心に対し前方に位置するため、大腿骨を内旋し関節面の適合性を高めており、FNAが大きいほどその内旋角度は大きくなる.また過小のFNAは大腿骨頭中心が後方に位置するため、大腿骨を外旋し適合性を高める.これが動作中の大腿骨の運動方向と回旋量を決定するため、FNAは大腿骨、膝関節回旋角度に影響を与えたと考えられる.またFNAが過小の被験者は、大腿骨回旋角度が小さく脛骨回旋角度が大きい傾向にあり、これはFNAにより制限された大腿骨の回旋運動を補うため、脛骨を過度に外旋させ膝関節の安定性を保っていると考えられる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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