理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-082
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理学療法基礎系
模倣動作における観察方向と神経機構との関係
―機能的MRIにおける検討―
渡邊 塁渡邉 修松田 雅弘来間 弘展村上 仁之妹尾 淳
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キーワード: fMRI, 模倣, 運動観察
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抄録

【目的】近年、模倣動作において、対象を観察する方向の違いによる、脳の賦活部位の相違が報告されてきている.運動学習において、動作の模倣は重要であり、運動の観察方向と脳活動の特性を検討することは、運動学習の効率化に重要と考える.
【方法】対象は右利き健常成人15名(19-47歳;平均22.8歳)である.被験者は、MRI装置内で仰臥位となり、鏡を通して手指の対立運動を行っている映像を右手で模倣した.手の映し出される方向は、被験者側から手が出ているように映し出される、一人称模倣方向と、被験者と向かい合っているように手が映し出される三人称模倣方向とした.それぞれにおいて、映像の手が、被験者の右手と解剖学的に等しければ解剖学方向、鏡像的に等しいければ鏡像方向とした.これらを合わせて、課題方向は、一人称解剖学方向、一人称鏡像方向、三人称解剖学方向、三人称鏡像方向の4方向とした.MRIはGE社製1.5T臨床用MR装置を使用した.データはMatlab上の画像処理ソフトSPM2を用い、個人解析は有意水準0.001で行い、次いで全被験者の集団データを有意水準0.001で課題の4方向に関して、ANOVAを実施した.本研究は、首都大学東京研究倫理審査規定に基づくものである.
【結果】一人称解剖方向では、右上側頭回近傍にのみ有意な賦活がみられた.一人称鏡像方向では、両側上側頭回近傍、左楔前部、Broca野、左角回近傍に有意な賦活がみられた.三人称解剖方向では、右上側頭回近傍、両側楔前部、Broca野、両側角回近傍に有意な賦活がみられた.三人称鏡像方向では、Broca野、左楔前部、左基底核周辺に有意な賦活がみられた.また、三人称と一人称方向を比較すると、左運動関連領野、右下頭頂小葉近傍に賦活がみられた.三人称解剖方向は一人称解剖方向よりも、右下頭頂小葉近傍、左運動野に賦活がみられた.
【考察】 三人称、一人称鏡像方向ではBroca野が賦活しており、運動を概念的に認知し模倣していると考えられた.三人称方向はその賦活領域から、対象運動を自身と区別した上で模倣していたと考えられた.また三人称解剖方向は、自身の身体表象を参照しながら視空間的に運動を捉えていたと思われる.一方、一人称解剖方向では、上側頭回近傍のみの賦活があり、対象運動を視覚から運動感覚に変換した後、自身の身体や空間的な参照をせず、より自動的に模倣をしていたと推測される.
【まとめ】一人称解剖課題は、他の課題に比べ、賦活範囲が限局していたことから、もっとも容易に模倣が可能なのではないかと考えられた.一方、三人称方向、特に解剖方向の模倣は、対象運動を捉える点でもっとも難易度が高いことが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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