理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-134
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理学療法基礎系
体重負荷量による足関節背屈筋筋力の段階付けの試み
重島 晃史山﨑 裕司大倉 三洋酒井 寿美栗山 裕司稲岡 忠勝宮﨑 登美子柏 智之中野 良哉
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抄録

【目的】Beasleyらは,足関節背屈筋力(以下,背屈筋力)における徒手筋力検査法(以下,MMT)のFairはその筋力全体の3%程度であると報告した.つまり,背屈筋力においてはFairからNormalまでの間に大きな筋力幅が存在することになる.このため,Fair以上の背屈筋力の変化を鋭敏にとらえることは不可能であり,従来のMMTにおける限界といえよう.踵部を支点として体重を負荷し,足関節を底屈させずに固定するには,背屈筋群の働きが必要であり,負荷した重量が大きいほど背屈筋群には強い筋力が求められる.そこで,本研究では,体重負荷による背屈筋力の新たな段階づけ方法を考案するための基礎データを得ることを目的として,体重負荷量と筋活動量の関係について検討したので報告する.

【方法】対象者は健常成人15名(年齢21±1歳)であった.対象者には,研究の趣旨を十分説明し,同意を得た後に実験を行った.筋電図の測定では右側前脛骨筋を測定対象とし,ディスポ電極を電極中心距離2cmで貼り付け,双極導出した.運動中の波形は日本光電製マルチテレメータシステムを用い,TEAC製テープレコーダーに記録した.まず対象者の両足部をそれぞれ体重計に乗せ,軽く壁に寄りかかった立位姿勢をとった.次に,右踵部に全体重(100%)を負荷し(許容範囲±5%),その状態で足関節を全可動域背屈させた.最後に,その時の筋活動量を5秒間計測し,中3秒間の筋電図積分値を算出した.同様の手順で,体重負荷量を80%,60%,40%,20%と段階的に漸減させ,筋活動量を測定した.また,同側前脛骨筋の最大等尺収縮時の筋電図積分値を算出し,各体重負荷での筋電図積分値を正規化(以下,%IEMG)した.なお,各段階の測定は十分休息をおいて実施した.

【結果】各体重負荷における%IEMGは,体重負荷量20%,40%,60%,80%,100%の順に,27.1±14.0%,32.6±14.8%,40.3±18.1%,47.5±19.3%,65.8±18.7%であり,体重負荷量の増加に伴い,筋活動量の増加を認めた.対象15名中,負荷量の順序と筋活動量の順序が逆転した例を5名に認めた.逆転していた段階は1段階が4名,2段階が1名であった.

【考察】段階的に体重負荷量を変化させることで,背屈筋に段階的な負荷が与えられることが明らかとなったことから,FairからNormalまでの幅広い筋力域をより細分化して評価できることが示唆された.また,体重負荷量によって得られた筋電図積分値は,筋力低下を生じた背屈筋を対象とした場合,十分な負荷強度をカバーしていた.よって,Fair以上の筋力を有する症例の筋力増強訓練にも利用可能なものと考えられた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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