理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-135
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理学療法基礎系
当院における高齢者の日常生活自立度と年齢の関係
―前期高齢者と後期高齢者に着目して―
山崎 和博
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キーワード: 高齢者, 加齢, Barthel Index
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抄録

【目的】平成20年4月から、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)が開始され、75歳以上の高齢者がその対象となった.しかし、高齢者の健康状態は疾患、個人差、性差など様々な要因が影響し、一概に年齢で区切ることには疑問が残る.そこで、高齢者の状態を調査することは、今後の医療・介護保険制度を向上させるうえで重要と考え、当院でリハビリテーションを実施した65歳以上の入院患者を対象に入院前から退院までの状況を調査し、日常生活自立度と年齢との関係を検討することを目的とした.
【対象】平成19年および20年の5月から9月に当院へ入院した65歳以上の高齢者911名(男性369名、女性542名)とした.前期高齢者(65~74歳)は388名、後期高齢者(75歳以上)は523名であった.
【方法】当院で用いる入院患者サマリーにて、年齢、性別、疾患名、手術名、入院日、手術日、退院日、入院前生活、退院時転帰、入院前Barthel Index(以下BI)、リハ開始or手術5日後BI、退院時BI、BI改善値(退院時BI-リハ開始or手術5日後BI)を調査した.また全対象から整形疾患、脳血管疾患、廃用症候群を抽出し、整形疾患を下肢骨折群、TKA群、THA群に分類した.情報収集は、リハ開始時に入院患者または家族から同意を得て実施した.統計処理は、年齢とBIについてピアソンの相関係数、前期高齢者と後期高齢者のBIの比較には対応のないt検定を用いた.有意水準は5%とした.
【結果】整形疾患は497名、脳血管疾患は240名、廃用症候群は159名であった.また下肢骨折群は103名、TKA群は82名、THA群は57名であった.年齢と退院時BIとの相関は、全対象(p<0.01, r=-0.33)および、整形疾患(p<0.01, r=-0.516)、脳血管疾患(p<0.01, r=-0.356)、廃用症候群(p<0.01, r=-0.21)、下肢骨折群(p<0.01, r=-0.513)、TKA群(p<0.05, r=-0.261)、THA群(p<0.01, r=-0.446)の全てで有意差を認めた.全体で前期高齢者は入院前BIおよびリハ・手術5日後BI、退院時BIが後期高齢者より有意に高かったが、BI改善値では有意差を認めなかった.TKA群を除く各分類で退院時BIは、前期高齢者が後期高齢者より有意に高かった.
【考察】下肢骨折などの整形疾患では、退院時BIの低下に加齢の影響も考えられるが、脳血管疾患等では他の要素の影響が大きいと思われる.またTKA群のように、整形疾患でも疾患や術式により加齢の影響が低いことが考えられ、より詳細な調査が必要である.前期と後期高齢者ではBI改善値のみに差を認めなかったことから、リハビリテーションにより後期高齢者も前期高齢者と同程度のBI改善が期待できると考えられる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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