理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-170
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理学療法基礎系
健常成人における足底感覚と重心動揺の関係
―足底の部位による影響の違いについ―
千葉 健山中 正紀武田 直樹堀 享一由利 真菊本 東陽
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キーワード: 重心動揺, 触圧覚, 足底
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抄録

【目的】
立位での姿勢制御において、足底感覚が重要な役割を果していることが報告されている.足底感覚の検査には、2点識別覚の検査や触圧覚閾値の検査が行なわれており、片脚立位保持時間や重心動揺パラメータとの間に相関があるとの報告がある.しかしながら、足底のどの部位の感覚が片脚立位保持時間や重心動揺に関わっているかを詳細に検討した報告は見当たらない.本研究の目的は足底のどの部位の感覚が立位での重心動揺に影響を与えているかを検討することである.
【方法】
対象は本研究の趣旨を説明し同意を得られた下肢体幹に障害のない健常成人10名で、男性6名(25.0±3.3歳)、女性4名(24.5±2.4歳)であった.足底感覚の測定にはSemmes-Weinstein Monofilamentsの20本セット(酒井医療)を用い、測定部位は利き足の足底第1~5趾、母趾球、小趾球、中足部内側、外側、踵部の10箇所とした.各部位は3回測定し、3回とも知覚可能な値を触圧覚閾値とした.重心動揺の測定には重心動揺計(アニマ社製)を用い、硬い支持面、不安定支持面の各条件で閉脚立位、利き足での片脚立位を開眼にて保持させ、その間の総軌跡長、実効値面積を求めた.計測時間は不安定支持面での片脚立位のみ15秒とし、その他は30秒とした.不安定支持面での測定時には重心動揺計の上にバランス・パッド(Airex・酒井医療)を置き、その上で立位保持を行なわせた.なお、各測定条件はランダムに行なった.統計処理は足底の各部位の触圧覚閾値と総軌跡長、実効値面積との相関をSpearmanの順位和相関分析を用いて検討した.有意水準は5%とした.
【結果】
触圧覚閾値の最低値は3.22、最高値は4.93であった.触圧覚閾値と重心動揺の関係に関して、不安定支持面での閉脚立位において第1趾と総軌跡長(p<0.05、r=0.759)、片脚立位において第1足趾と総軌跡長(p<0.01、r=0.916)および実効値面積(p<0.05、r=0.740)との間に有意な正の相関を認めた.他に有意な相関はみられなかった.
【考察】
触圧覚閾値は先行研究とほぼ同様な傾向となった.重心動揺と足底感覚との関係では、より不安定な条件において第1趾の触圧覚閾値と重心動揺との間にのみ有意な正の相関を認めた.第1趾にはメカノレセプターが豊富であり、また、足底感覚情報は姿勢制御に重要であるといわれている.本研究の結果は、このことを反映したものと考えられ、足底、特に第1趾の触圧覚閾値は重心動揺に影響を与える要因の一つとなることが示唆された.
【まとめ】
より不安定な立位条件において、第1趾の触圧覚と重心動揺との間に有意な正の相関が得られた.このことから、足底、特に第1趾の触圧覚閾値は重心動揺に影響を与える要因の一つとなることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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