理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-272
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神経系理学療法
回復期リハの退院時ADLに影響する急性期リハ因子
―脳血管障害患者での検討―
長縄 幸平上田 周平岩﨑 真美平林 孝啓川瀬 修平藤原 光宏小竹 伴照鈴木 重行
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キーワード: 退院時FIM, BI改善率, 初期BI
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抄録
【目的】
平成20年度の診療報酬改訂により回復期リハではADL改善度等で施設基準が区分され、急性期リハ中から回復期リハでの退院時ADLを予測することがより重要となった.退院時ADLの調査報告は急性期、回復期各々での報告は多いが、急性期と回復期の施設間で関連をみた報告は少ない.そこで今回、急性期の調査項目と回復期の退院時ADLとの関連性を比較検討した.
【方法】
対象は2006年8月~2008年5月に当院で急性期リハを行い回復期リハに転院となった、初発脳血管障害患者のうち発症前ADLが自立しており、急性期リハ中にBarthel Index(以下、BI)の悪化がなかった39例(男性23例、女性16例)とした.平均年齢は73.2±9.9歳であった.調査項目は年齢、急性期リハの初期下肢Br-Stage、初期BI、BI改善率とした.BI改善率は(退院時BI-初期BI)/入院日数で求めた.回復期の退院時ADLは退院時Functional Independence Measure総得点(以下、退院時FIM)とした.統計は退院時FIMを従属変数とし、年齢、初期下肢Br-Stage、初期BI、BI改善率を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った.なお、本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
重回帰分析により抽出された因子は、BI改善率(標準偏回帰係数:β=0.641)、初期BI(標準偏回帰係数:β=0.482)であった.回復期の退院時FIMの予測式は53.822+17.179×BI改善率+0.630×初期BIであり、自由度調節済み決定係数は0.663となった.そこで初期BIを1)低得点群「0-10点」、2)中得点群「11-50点」、3)高得点群「51-80点」のそれぞれ1群、2群、3群に分類した.さらにBI改善率を平均値1.36点/日を基準にして、A)軽度改善群とB)高度改善群のそれぞれA群、B群の2群に層化し、これらの群を組み合わせた6群間の退院時FIMについて比較検討した.また、在院日数、総訓練量、1日あたりの訓練量についても比較検討した.その結果、退院時FIMは1-A群に比較し1-B、2-B、3-A、3-Bの各群が有意に高い得点であった.その他に有意差はなかった.在院日数、総訓練量、1日あたりの訓練量は6群間で有意差はなかった.
【考察とまとめ】
急性期の初期BIとBI改善率で回復期の退院時FIMを予測できる可能性が示唆された.初期BIとBI改善率にて群分けした群間比較では、初期BIが低得点で改善率が低い群は、初期BIが中得点でBI改善率が低い群を除く他の4群と退院時FIMに差を認めた.今回の結果から、退院時ADLを予測することがより重要となった回復期では、急性期の初期BIとBI改善率が退院時ADLを予測する有用な指標の1つになると思われる.今後は標本数の増加、調査項目の再検討により、急性期リハ因子による回復期のADL予測の精度をさらに向上させていきたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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