抄録
【目的】包括医療制度導入やリハビリテーション診療報酬改定から、病病連携のより一層の強化が望まれる中、当院でも発症から早期に患者を受け入れ、集中的なリハビリテーションを提供することを重要視している.本研究の目的は、急性期病床から回復期病棟への転院時期によるFIM効率の違いを明らかにすることである.
【対象】当院が開院した平成20年4月1日から6ヶ月間、当院回復期病棟から退院した脳血管疾患患者のうち、発症前のADLに介助を要していた者と当院入院中に他院への転院期間がある者を除外した44名を対象とした.全ての対象は転院当日から、週7日、理学療法・作業療法と必要に応じて言語聴覚療法を実施した.また、看護・介護、リハスタッフが連携して立案した病棟生活でのADL指導を受けていた.
【方法】カルテより、性別、年齢、脳血管疾患の種類、転院時の上下肢Brunnstrom stage、転院時・退院時のFunctional Independence Measure(以下FIM)、在院日数を抽出した.対象を発症から30日以内に転院した群(以下早期群)と発症から31日以上に転院した群(以下非早期群)の2群に分けた.さらに、早期群と非早期群のFIM効率{(退院時FIM-転院時FIM)/在院日数}を求め、2群間で比較した.統計処理にはMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準は5%とした.
【結果】早期群は発症から転院までは22±6日の男性16名、女性7名、年齢68±12歳.脳梗塞12名、脳出血9名、頭部外傷2名.転院時のBrunnstrom stageの中央値は上下肢ともV、転院時のFIMは78.4±24.4点、在院日数は58±32日であった.非早期群は発症から転院までは43±9日の男性15名、女性6名、年齢63±20歳.脳梗塞14名、脳出血5名、頭部外傷2名.転院時のBrunnstrom stageの中央値は上肢がIV、下肢がV、転院時のFIMは71.8±39.9点、在院日数は70±42日であった.FIM効率は早期群0.63±0.63、非早期群0.30±0.21と有意差を認めた.
【考察とまとめ】2群間で転院時の患者属性と機能・能力に大きな違いはなかったが、急性期病床から回復期病棟への転院時期が早いと、その後の在院日数が短い傾向であり、FIM効率が有意に良好であった.このことから病病連携の一層の強化により早期に回復期病棟への転院が重要であることが示唆された.早期転院がFIM効率を向上させる要因の分析に関しては今後の課題としたい.なお、本研究は研究計画書を通じて筆者の所属する病院の倫理委員会の承認を得た.