理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-332
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神経系理学療法
脳卒中地域連携診療計画書の運用状況と今後の課題
山下 淳一定松 修一坪内 健一中嶋 裕子磯野 祐介谷水 英子伊東 孝洋吉田 宏史河野 宏美
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抄録
【目的】近年、医療を取り巻く社会情勢の変化により、在院日数の短縮・医療の機能分化が進み、一医療機関完結型の治療は困難になっている.当院も、地域完結型の治療方針であり、急性期病院から回復期病院へのシ-ムレスな治療を実践するために、平成18年6月より、回復期病棟を有する2病院と脳卒中リハビリ用連携パスの運用を試験的に開始し、数回の合同会議を経て現在の書式に至っている.そこで今回は、7つの連携病院と正式に運用を開始した脳卒中地域連携診療計画書(以下、連携パス)の運用状況と今後の課題について検討する.

【対象と方法】平成20年4月から9月の間に、リハビリを施行し退院又は転院した患者168名の内、連携パス対象外疾患や自宅・死亡退院を除外した転院例75名を対象とした.内訳は、男性33名・女性42名、平均年齢73.13±12.02歳、脳梗塞52名・脳出血19名・くも膜下出血4名であった.方法は、連携パス使用の有無、入院期間、転帰時FIM及びmRS等について調査した.なお、本研究はヘルシンキ宣言に沿って行われたものである.

【結果】連携パスは、75名中58名(77.3%)に使用されていた.使用例の内訳は、男性28名・女性30名、平均年齢70.93±11.91歳、脳梗塞41名・脳出血15名・くも膜下出血2名であった.入院期間は、平均32.19±15.38日であり、転帰時FIMの平均は65.28±28.15点、mRSは、0:0名・1:2名・2:3名・3:5名・4:37名・5:11名であった.また58名中55名(94.8%)が 、回復期病棟を有する病院への転院であった.
次に非使用例17名の内訳は、男性5名・女性12名、平均年齢80.65±8.99歳、脳梗塞11名・脳出血4名・くも膜下出血2名であった.入院期間は、平均36.94±31.02日であり、転帰時FIMの平均は38.88±25.92点、mRSは、0:0名・1:0名・2:0名・3:1名・4:6名・5:10名であった.

【考察】現在使用している連携パスは、入院後の経過記録と紹介状を兼ねた形式にて、職員間の情報の共有と標準化を図り、FIMとmRSにより予後予測及び入院期間の設定を試みている.今回、転院例の約80%が連携病院へ転院し、その約95%が回復期病棟への転院であったことから、回復期の患者に集中的なリハビリが施行されていることが推測できる.また、非使用例は、mRSで重度の障害又は寝たきりの患者が約95%を占めることから、最初から長期入院が可能な病院への転院であった.今後は、返却されてくる連携パスをもとに、定期的なカンファレンスを開催し、患者の最終goalの確認と転院時に予測した予後及び入院期間の設定が妥当なものであったかを検討するとともに、新人教育に活用していく必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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