理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-312
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神経系理学療法
障害児施設における日本語版Aberrant Behavior Checklistの信頼性
上杉 雅之対馬 栄輝嶋田 智明
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抄録
【目的】Aberrant Behavior Checklistは世界的に薬物療法の評価尺度として有用性が認められているチェックリストであり、一方、同尺度は症候群の表現型の評価などさまざまな研究に非常に広く利用されている.今回、我々は日本語版Aberrant Behavior Checklist(以下ABC-J)の障害児に対する適応性を調査する目的で障害児施設における信頼性について報告する.【方法】対象は保護者から本研究の説明を受け同意を得た障害児通園施設に在籍している精神発達遅滞、脳性麻痺等の障害児9名(男児7名、GMFCSレベル1が1名、3が4名、4が1名、5が3名、言語発達は発声レベル3名、喃語レベル4名、有意味語レベル2名)であった.検者は対象を知っている経験年数10年以上の理学療法士(以下PT)・作業療法士(以下OT)・保育士2名の計4名であった.異なる検者間の結果の信頼性を示す検者間信頼性においては4名の検者を個別にABC-Jを用いて検査させた.また、同一検査者の異なる時期の信頼性を示す検者内信頼性においては、小野の方法に従って最初の検査を実施した1ヵ月後に2名の検者に同法を用いて検査させた.統計学的解析は、級内相関係数(ICC)を求めることにより検者間信頼性と検査者内信頼性を検討した.【結果】検者間信頼性は、「興奮性」「無気力」「常同行動」「多動」「不適切な言語」の各項目順にICC(2,1)で0.582,0.144,0,0.494,0.467であった.検者内信頼性は,ICC(1,1)PTの検者で項目順に0.720, 0.991,0.996,0.902,0.261であった.OTの検者で項目順に0.578,0,0.636,0.288,1であった.【考察】ABC-Jは、Amanらにより開発された「興奮性」15項目、「無気力」16項目、「常同行動」7項目、「多動」16項目、「不適切な言語」4項目の計58項目からなる異常行動を評価することが可能な質問紙である.本研究では、検者間信頼性において信頼性のある項目が見られたものの「無気力」「常同行動」の項目はとりわけ低値を示した.検者内信頼性においては、PTの検者では「不適切な言語」の項目以外は0.7以上であり、OTの検者では「無気力」と「多動」の項目以外は0.57以上の信頼性を示した.検者間信頼性において、「無気力」「常同行動」の低値が生じた理由として、重度の重複障害児を対象に含めたことで評価することが困難な項目があったことと、検者に対して評価項目についての説明をせずに評価を実施させたことが考えられた.検者内信頼性が低値を示した理由としては、評価対象が2回目の評価の時に変化している対象があり信頼性を低下させた可能性はあるものの、検者2名が違う項目に低値を示したことは前述した理由によるものと考えられた.今後は、より適切な対象者を選択することや、項目の説明を実施し同じ見解が持てるようにする必要があり、特に「興奮性」以外の項目には共通した認識を持つための詳しい説明が重要であると考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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