理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-313
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神経系理学療法
発達障害児に対するコーディネーショントレーニングの効果
―Home-exを試みて―
楠 孝文水本 憲枝藤井 美子渡部 潤一渡部 あさみ田内 広子
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抄録

【目的】
当センターでは、粗大運動や知的に大きな問題をもたない発達障害児に対して、集団での指導を定期的(1回/1M)に行っている.しかし、個々の運動能力の向上からみると、集団の指導だけでは量的に不十分である.そこで今回我々は当センターの集団指導で、東根が紹介するコーディネーショントレーニング(以下COT)を指導実施し、3ヶ月間のHome-exを試みた後、運動能力が高められたかどうかを検討したので報告する.
【方法】
対象:GMFCSレベル1で、通常の幼稚園、小学校に通っている発達障害児18名(男児14名、女児4名).年齢は5歳6ヶ月~10歳7ヶ月で平均年齢7歳5ヶ月.診断名は協調性運動障害6名、広範性発達障害5名、脳性麻痺4名(低出生体重児)、注意欠陥多動性障害2名、自閉症1名.事前に対象児と両親には、COTの目的と実施方法を説明し同意を得た.
実施期間:2008年4月~7月
評価方法:COT のHome-ex前後に以下の5項目の検査を行った.日本COT協会が紹介しているコーディネーションテストの中から、立ち幅跳び・背面ボール投げ・台上回旋(一部改変)とステップテスト・閉眼片足立ちを行った.
結果の処理:Home-ex 前後の検査値の変化を比較するため、Wilcoxonの符号付順位検定を行い、有意水準は5%未満とした.
【結果】
3ヶ月間のCOT Home-exは、一人平均29.7回,391.4分(13.2分/1回)行なわれていた.各検査のHome-ex前後の平均値は、立ち幅跳び80.5±19.4cmが97.3±14.8cm、背面ボール投げ1.4±1.3点が3.0±1.8点、台上回旋6.1±1.8回が7.0±1.6回、ステップテスト41.5±10.4秒が33.8±9.9秒、閉眼片足立ち4.6±3.0秒が6.3±5.1秒と改善した.立ち幅跳び、背面ボール投げ、ステップテストはp<0.01、台上回旋はp<0.05で有意な差が認められた.閉眼片足立ちは有意差が認められなかった.
【考察】
このCOT のHome-exにより、運動する機会を増せたことが良かったと思われる.また、3ヶ月という短期間で運動能力が有意に向上したのは、動きのバリエーションを多く経験したことにより、運動のタイミング(コツ)や身体をスムースに動かす能力、動作の変換能力が向上したためと考えられる.閉眼片足立ちは、運動自体が難しい上、Home-exの運動に静的なバランスをとる運動が少なかったことと、閉眼ということで視覚的な代償がないため学習効果が得られにくかったのではないかと推測される.

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© 2009 日本理学療法士協会
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