理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-317
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神経系理学療法
極低出生体重児の運動機能獲得時期と精神発達について
安達 みちる長谷川 三希子河野 由美安達 拓北目 茂百瀬 由佳猪飼 哲夫
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抄録

【はじめに】当院では、極低出生体重児に対し理学療法士が定期的に運動機能を中心に評価し、運動発達状況をご家族に伝え、必要に応じ指導を行っている.今回、極低出生体重児の独歩までの運動機能獲得時期および6才時IQとの関係について検討したので報告する.
【対象】1992年1月~2002年2月に当院で出生され、当院理学療法士が独歩まで評価し、6歳時IQが確認できた極低出生体重児77名の内、神経学的障害を有した6名を除く71名(882±237g).出生体重が1000~1449g(1236±167g)15名(男性7名、女性8名)、999g以下(829±113g)56名(男性29名、女性27名).
【方法】修正月齢での運動機能獲得時期と6歳時のIQを評価した.評価は全て対象児の家族の同意を得て行った.運動機能は、定頚、背臥位から腹臥位への寝返り、1分以上両手を離しての座位保持、四つ這い移動、伝い歩き、1m以上の独歩の各機能の確認できた時点を獲得時期とし、対象の90%以上が獲得する修正月齢(90%通過修正月齢)を求めた.6歳時のIQは、WISC-Rまたは、WISC-3で測定し、IQ85以上を正常、IQ70~84を境界、IQ70未満を遅滞とした.出生体重1000g以上を極群、999g以下を超群とし、90%通過修正月齢から逸脱した症例の検討、および、運動獲得時期と6歳時IQとの関係を後方視的に検討した.
【結果】1)全例を対象とした各機能の90%通過修正月齢は、定頸6ヶ月、寝返り8ヶ月、座位12ヶ月、四つ這い移動13ヶ月、伝い歩き14ヶ月、独歩18ヶ月だった.2)IQの判定は、正常44名(極群14名、超群30名)、境界16名(極群1名、超群15名)、遅滞11名(全て超群)だった.3)各運動機能の90%通過修正月齢から逸脱した症例のうちIQ遅滞の割合は、定頚67%、寝返り60%、座位75%、四つ這い移動50%、伝い歩き40%、独歩67%であった.4)定頸、座位、独歩の獲得時期は、IQが低い児が遅れる傾向がみられた.5)IQ判定正常での極群、超群の90%通過修正月齢の比較では、定頚が極群、超群共に5ヶ月、寝返り極群、超群共に8ヶ月、坐位極群9ヶ月、超群11ヶ月、四つ這い移動極群10ヶ月、超群13ヶ月、伝い歩き極群12ヶ月、超群13ヶ月、独歩極群15ヶ月、超群18ヶ月であった.6)IQ正常で90%通過修正月齢から逸脱した症例では、理学療法評価上の問題点として体幹の低筋緊張があげられていた.
【考察】運動の獲得が90%通過修正月齢から逸脱した児にはIQ遅滞児が多く、IQの低い群は運動機能の獲得が遅れる傾向が認められた.出生体重による比較では超低出生体重児群の通過が遅い傾向がみられ、体重が小さい群ほど獲得時期が遅くなるという報告と一致した.定頸、座位、独歩が遅れる症例は、精神発達への早期対応も必要と考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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