理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-364
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骨・関節系理学療法
当院外来通院患者の愁訴部位と4スタンス理論での分類
安里 和也比嘉 裕
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キーワード: 4スタンス理論, 動き, 愁訴
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抄録
【はじめに】 我々は「ヒトの動き」というメインテーマで研究をすすめてきた中、これまで得られた見解として、「動き」は様々な環境因子(内的・外的を含む)により決定され、厳密な条件設定を行わなければ一定の刺激で一定の結果が得られるとは限らないと考えている.つまり「動き」という表現形には多くの自由度があるものと捉えている.その自由度の高い「ヒトの動き」ではあるが立位に主眼をおいて、足部をつま先か踵、及び内側か外側の4象限に分割し、主にどの部分で支持しているのかという4スタンス理論を用いて分類してみた際、愁訴部位との関連性を見出せないかと考え、検証したのでここに報告する.

【対象と方法】 対象は本研究の主旨に賛同を得た疼痛を訴える外来通院患者133例(男性47例、女性86例、平均年齢58.1±18.36歳)とし、カルテを後方視的に調査した.対象者を、4スタンス理論の分類検査のうち上肢牽引検査、手指牽引検査、足部-体幹回旋検査、下肢筋力検査、上肢引っ張り検査の5つの検査を用い、つま先内側(以下A1)・つま先外側(以下A2)・踵内側(以下B1)・踵外側(以下B2)の4群に分類した(以下、分類1).また調査時の愁訴部位を頚・肩・肘・手・腰・股・膝・足・その他(重複あり)の8つの関節に分けた(以下、分類2).上記により分類した分類1と分類2との関係をχ二乗検定にて検証した.

【結果】 検定の結果、4スタンスの分類と愁訴部位との関連性において有意差はみられなかった.対象133例の分類1の内訳はA1が56例、A2が56例、B1が11例、B2が10例であった.分類2の愁訴部位の内訳は全体では腰・膝・頚の順に多く、A1・B1・B2の各群でも同様の順に多く、A2は腰・膝・肩の順となっていた.A2の頚への愁訴は少ない傾向であった.

【考察】 結果から廣戸が提唱する4スタンス理論での分類と愁訴部位との関連性はみられなかった.しかし分類1にてA1とA2(以下A群)が多くを占め、B1とB2(以下B群)が少数であったことは興味を引く結果となった.廣戸によるとA群は足底・膝・鳩尾、B群は足底・股関節・頚を運動軸として合わせることにより、そのヒトなりの効率の良い動き方に繋がると述べている.これは臨床的にも立ち上がりなどの動き出しにおいて鳩尾及びその背側部から動きを誘導するとスムースに動き出せる方が多い印象と一致すると感じている.また廣戸はA2及びB1は体幹の動きが後方主導として動いた方が効率の良い動きになりやすいと述べており、頚を運動軸として用いず体幹が後方主導となりやすいA2では頭部前方肢位となりにくく、今回の頚への愁訴が少ない傾向となったのではないかと考えている.

【まとめ】 今回の研究では明示できなかったが、「ヒトの動き」の多彩な視点の一つとして4スタンス理論も今後、発展の余地は残されていると考えている.
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© 2009 日本理学療法士協会
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