理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-366
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骨・関節系理学療法
浮き趾とアーチ高率の関係
福山 勝彦小山内 正博細木 一成矢作 毅丸山 仁司
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抄録

【目的】我々は「立位時に足趾が地面に接していない状態」「歩行時に趾尖まで体重移動されない状態」を「浮き趾」と称して研究を進めてきた.これまで報告してきた内容は、浮き趾例では足趾把持力、前方重心移動能力が低下していること、感覚的要素を含む運動調節能力が低下していること、歩行時に趾尖まで体重移動されないことで推進力が低下し大殿筋の筋活動に異常がみられることなどである.しかし浮き趾の発生様式については明らかにされていない.当初、浮き趾は足趾屈筋群の筋緊張が低下しアーチが下降した状態と考えていたが、Pedoscopeの画像からアーチが保たれていても浮き趾を呈する例をみることがある.今回は浮き趾とアーチ高率の関係を調査し、浮き趾の発生様式について検討することを目的とした.
【対象】整形外科疾患、耳鼻咽喉科疾患の既往が無い健常成人女性65名(22.1±2.1歳)を対象とした.なお被検者には事前に研究の趣旨を説明し文書による同意を得ている.
【方法】被検者を自作のPedoscope上に5cm開脚位で起立、動揺が落ち着いたところで足底画像を撮影した.得られた画像から左右10本の足趾に対し、足趾が鮮明に映っているものを2点、不鮮明なものを1点、全く映っていないものを0点として20点満点のスコアを求めた(浮き趾スコア).第1趾が両側とも2点でかつ浮き趾スコアが18点以上のものを正常群(A群)、浮き趾スコアが10点以下のものを浮き趾群(B群)として2群を抽出した.アーチ高率は、床から舟状骨までの高さ(舟状骨高)と踵骨後面から第1趾先端までの長さ(足長)を計測し、舟状骨高を足長で除して求めた.計測肢位は椅子座位と安静立位とした.また座位時のアーチ高率から立位時のアーチ高率を減じアーチ下降率を求めた.各肢位のアーチ高率およびアーチ下降率について両群間でMann-Whitney の検定を用いて比較検討した.なお有意水準は5%未満とした.
【結果】1. A群は23例、B群は18例であった.2. 座位および立位のアーチ効率は両群間に有意差はみられなかった.3. アーチ下降率はA群において有意に高値を示した(p<0.05).
【考察】各肢位のアーチ高率について両群間に有意差がなかったことから、浮き趾例ではアーチが下降した例と上昇した例が存在することが推察される.前者は当初より予測していた足趾屈筋群の緊張が低下した状態、後者は足趾伸筋群の緊張が増大することでMP関節の伸展が起こり、これに伴い足底筋膜の緊張が増大した状態にあると考える.また浮き趾群でアーチ下降率が低下していたのは、前者の場合はもとよりアーチ形成が不十分であること、後者は足趾伸筋、足底筋膜の緊張などにより足部の柔軟性が低下していることが原因と考える.今後は履物、生活習慣、スポーツ歴等を加味しさらに検討を進めたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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