抄録
【目的】
腰痛症者の体幹筋力については,近年では背筋筋力低下や機能不全を指摘した報告が多数を占めており,体幹伸展筋トレーニングが腰痛症の改善に寄与することが報告されている.そのため,体幹伸展筋に対するトレーニングを再考する必要があると考える.我々は第43回本学会にて体幹伸展運動の際に股関節外転を行うことで多裂筋の筋活動が増加することを報告した.しかし,腹筋群の活動が不明であり今後の検討課題となった.
本研究の目的は,椅子座位での体幹伸展運動中の股関節外転が体幹筋活動に与える影響を筋電図学的に解析し,伸展筋力トレーニング法の一助とすることである.
【方法】
対象は,健常成人男性10名(平均年齢25.9±4.7歳)を対象とした.対象者には事前に研究の目的と内容を説明し,研究参加の同意を得た.
運動課題は,(1)椅子座位で体幹伸展運動,(2)椅子座位で股関節外転を伴う体幹伸展運動の2課題とした.測定は,椅子座位にて大腿遠位部を伸縮性のないバンドにて固定し実施した.体幹伸展筋力は,Hoggann Health社徒手筋力計MICRO FET2にて体幹伸展の最大収縮を全施行で確認した.筋活動の測定にはNoraxon社製 Myosystem1400を使用して,それぞれの運動課題施行時の体幹筋活動を計測した.導出筋は,多裂筋,腰部脊柱起立筋,胸部脊柱起立筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹直筋の計6筋とした.筋活動の算出は,Danielsらの徒手筋力検査法でのNormalの手技を100%最大随意収縮(MVC)とし,各運動課題での%MVCを求めた.
統計学的処理は,各運動課題間の体幹伸展筋力および体幹筋活動の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
運動課題施行時の体幹伸展筋力は(1)と(2)の間に有意差は認められなかった.
運動課題施行時の体幹筋活動は,(2)にて多裂筋の筋活動に有意な増加が認められた.その際の,脊柱起立筋の筋活動には有意差を認めなかった.腹筋群においても,外腹斜筋,内腹斜筋,腹直筋の各筋の筋活動に有意な増加が認められた.
【考察】
本研究の結果,椅子座位で股関節外転を伴う体幹伸展運動は,背筋群においては体幹深部筋の筋活動を増加させることが認められた.腹筋群においても筋活動の増加が認められた.股関節外転による骨盤の固定性の増加および体幹筋群の同時収縮により,多裂筋の活動量の増加が得られたと考える.今後,有疾患者を対象として臨床における検討を実施する必要であると考える.
【まとめ】
椅子座位での体幹伸展運動中の股関節の外転は,体幹筋の筋活動を増加することが示された.椅子座位で股関節外転を伴う体幹伸展運動は腰痛症者に有用であると考える.