理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-393
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骨・関節系理学療法
ハムストリング機能を用いた膝関節固有感覚評価法の信頼性
―検者内および検者間信頼性の検討―
佐藤 正裕河端 将司太附 広明加賀谷 善教
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抄録
【はじめに】膝関節固有感覚の評価には膝関節位置覚や重心動揺、膝周囲筋反応潜時などあるが、簡便でなく臨床場面では一般化していない.藤田らは膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)への刺激がメカノレセプターを通じてハムストリングに作用するとしたACL-Hamstring reflexと、ハムストリングが膝関節伸展にも作用するとしたLombard’s Paradox(LP)現象に着目し、椅子からの立ち上がり動作でのハムストリング収縮開始角度が膝関節固有感覚の影響を受けていることを報告した.我々の先行研究では、ACL再建術後患者の患側のLP現象が有意に遅延していることを報告した.本研究の膝関節固有受容感覚評価法は、患者本人に筋収縮を触知させる点とゴニオメーターによる角度測定の点で方法論的にバイアスが出現する可能性がある.今後臨床応用するにあたり、今回ACL再建術後患者を対象にLP現象を用いた膝関節固有感覚評価法の信頼性について検討を行ったので報告する.

【方法】対象は当院にてACL再建術を施行し、本研究の趣旨を説明して参加に同意した10名(男性6名、女性4名、手術側右4名、左6名、年齢23.3±11.8歳、身長163.0±9.1cm、体重62.0±16.7kg、術後期間17.3±9.3週)とした.膝関節固有感覚評価は藤田らの方法に準じて40cmの台からの両脚での立ち上がり動作とし、ハムストリング収縮時硬結が触れた時点の膝関節屈曲角度をゴニオメーターで測定した.測定の実施は習熟した検者2名とし、同一被検者に対して健側、患側の順に一側3回ずつ測定した.検者Aと検者Bの測定順序は被検者によりランダムとし、測定間隔は30分以内とした.なお、検者間で測定結果を参照しないようにした.解析はSPSS11.0Jを使用して、3回測定での検者内信頼性は級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)(1,1)を用い、検者間信頼性ではICC(2,1)を用いて検討した.

【結果】検者内信頼性はICC=0.95だった.検者A、Bを分けた場合、検者A、BともにICC=0.95だった.各回の検者間信頼性はICC=0.91であり、患側と健側を分けた場合、患側はICC=0.90で、健側はICC=0.91だった.また、3回測定の平均値の検者間信頼性はICC=0.90だった.

【考察】ICCの判定基準は0.80以上であれば有用であるとされている.本研究の結果、習熟した検者であればLP現象を利用した膝関節固有受容感覚評価法は検者内、検者間ともに高い信頼性が示された.よって臨床応用に耐えうる評価法であると考えられ、より高い信頼性の確立のために、今後は日差変動について検討を進める必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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