理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-433
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骨・関節系理学療法
投球動作における足部接地時の肩甲骨アライメントと肩最大外旋時の肩甲上腕関節外旋角度の関係
宮下 浩二小林 寛和小山 太郎浦辺 幸夫
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抄録
【目的】投球動作おいて肩関節外旋運動は不可欠であるが、その運動範囲が過剰になることにより肩へのストレスを増大させ、投球障害肩の誘因ともなってしまう.我々は第41回学会でステップ脚の足部接地時の肩関節角度は、その後の位相に生じる肩最大外旋角度に影響を及ぼすことを示した.本研究では、足部接地時の肩甲骨のアライメントが、肩最大外旋位における肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、足部接地時の肩甲骨後傾角度と肩最大外旋位における肩甲上腕関節外旋角度および肩甲骨後傾角度の相関について分析した.
【方法】対象は男子大学生20名(年齢21.9±1.7歳、野球歴10.0±2.8年)とした.対象にオーバーハンドスローでの全力投球を行わせ、ステップ脚の足部接地時からリリースまでの肩外旋角度、肩甲上腕関節外旋角度、肩甲骨後傾角度を三次元動作解析にて算出した.肩外旋角度は前腕と体幹のなす角度とした.肩甲上腕関節外旋角度および肩甲骨後傾角度は第41回学会で発表した方法に準じて算出した.次に、ステップ脚の足部接地時の肩甲骨後傾角度(アライメント)と、肩外旋角度の最大値(肩最大外旋位)における肩甲上腕関節外旋角度および肩甲骨後傾角度の相関を分析した.相関の分析にはピアソンの相関係数を用いた.危険率5%未満を有意とした.
【結果】ステップ脚の足部接地時の肩甲骨後傾角度は13.5±17.6°であった.肩最大外旋角度は154.8±13.0°であり、その時の肩甲上腕関節外旋角度は101.7±14.9°、肩甲骨後傾角度は32.9±15.7°であった.足部接地時の肩甲骨後傾角度と肩最大外旋位の肩甲上腕関節外旋角度の間には有意な負の相関がみられた(r=-0.48).また足部接地時の肩甲骨後傾角度と肩最大外旋位の肩甲骨後傾角度の間には有意な正の相関がみられた(r=0.69).
【考察】今回の結果から、足部接地時の肩甲骨後傾角度の増大により、肩最大外旋位における肩甲骨後傾角度の増大も確認された.また、一方で足部接地時の肩甲骨後傾角度の減少、すなわち肩甲骨前傾角度の増大は、肩最大外旋位において肩甲上腕関節外旋角度を増大させることも明かとなった.投球時の肩最大外旋角度は、主に肩甲上腕関節外旋角度と肩甲骨後傾角度で構成されるため(宮下2007)、肩甲上腕関節に加わるストレスを減少させるためには肩最大外旋位における肩甲骨後傾角度を増加させ、肩甲上腕関節外旋角度を減少させることが重要である.したがって、投球障害肩の予防にはステップ脚の足部接地時の肩甲骨前傾位を呈するアライメントを回避することが一つの方策となると考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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