理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-452
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骨・関節系理学療法
高校野球部に対するメディカルチェック(第1報)
―障害予防と競技力向上の観点より―
児玉 雄二青井 佳世子坂本 義峯青木 啓成村上 成道
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抄録
【目的】高校期の野球で生じる障害の原因としては、中学校期で身体機能に何らかの異常をきたしていたものの表出、高校入学後の練習量の増加に対する適応不良やケア不足、急性外傷後残存する機能不全部位の存在、などがあげられる.今回某長野県立高校野球部より依頼を受け、1年生全員に対し、入学後より定期的なメディカルチェック(MC)を行い、障害の早期発見と予防、さらには野球技能向上に関する参画の可能性も併せて検討したので報告する.
【方法】某長野県立高校野球部1年生24名に対し、高校入学後の4月と新チーム発足後の8月にMCを実施した.事前に監督・部長、選手にはMCについての説明を行ない、同意を得た.内容は、身長、体重、ポジション、障害歴等の情報収集、医師と理学療法士による関節可動域測定(ROM).動的バランスや姿勢保持能力テストとしてのパフォーマンステスト(PFテスト)、そして現場の監督・部長による打撃、守備、走塁等についての技能評価、の3項目について計測を行った.それぞれの項目について計50点の点数化にし、監督・コーチに還元した.
【結果】4月と8月の項目別点数の結果を比較検討すると、8月のROMは14名(約54%)で低下傾向、PFテストは14名(約54%)で改善傾向、技能評価は18名(約69%)で低下傾向が認められた.総合評価では16名(約62%)で低下傾向が認められていた.一方、総合点数の上位10名のみを抽出すると7名(70%)が改善傾向を示していた.項目別にみると、PFテストのみ8名(80%)に改善傾向を示していた.
【考察】医師とPTによる理学所見と、現場の指導者による技能評価の組み合わせを点数化した内容のMCとした.8月のMCでのROM結果は練習量の増加とケア不足と考えられる低下を認めた.PFテストは野球動作でのコアと呼ばれている部分の評価目的として行ったが、全体的に改善しておりトレーニング効果は得られていると考えられた.技能評価は低下していたが、指導者からは4月期の評価は甘くなりやすく、8月の評価の方が妥当性が高い、という感想を頂き、今後継続して評価する必要性があると考えられた.
【まとめ】今回のMCは練習グランド横の室内施設にて行い、動作解析機器や筋力測定機器を使用せず、選手と指導者に対し障害予防と今後のトレーニングの指標となるような内容を試行した.同校野球部は今後も定期的な開催を希望しており、今後継続してゆく中で、MC項目の関連性や内容の妥当性について、障害の罹患率や罹患期間、成長やトレーニング効果による変化等による検証を重ね、高校野球現場に即した活動にしてゆきたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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