理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-453
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骨・関節系理学療法
成長期野球肘における発生要因の検討
―生理的肘外反角度に着目して―
石井 裕之藤原 俊輔段 秀和永田 勝章永田 雄三三木 貞徳櫛橋 輝征
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抄録
【はじめに】投球障害肘の発生は,投球動作中のlate cocking phaseからacceleration phaseにかけての肘外反による内側でのtension force,外側でのcompression forceにより生じる.特に成長期においてはこの動的アライメントに加え,身体能力の未発達・解剖上の脆弱さ,投球過多などの個人因子と練習時間量などの環境因子が相互に絡み合い投球障害肘を発生させる要因となる.一般に生理的肘外反角度は成人に比べ,成長期の方が角度が大きく,この静的アライメントである生理的肘外反角度が投球障害肘の発生要因の1つとして関連があるのかを検討した.

【対象と方法】2007年9月から2008年9月までの1年間,当院を受診し内側上顆剥離骨折や離断性骨軟骨炎などを診断され野球肘と認められた100名(平均年齢12.3±1.7歳)を対象群とし,2008年1月から4月までにメディカルチェックを行なった中学・高校の野球部員のうち,肘関節に投球障害の既往が無かった者109名(平均年齢14.1±1.0歳)を比較群とした.なお,両群においてはあらかじめ本調査の趣旨を説明し同意を得た.方法は,2群共に肘関節完全伸展位・回外位にて上腕骨長軸と尺骨長軸に体表からゴニオメーターを使用し角度を計測した.統計にはF検定にて2群間のばらつきが無いと判断されたため,StudentのT検定を行い,有意水準を1%以下とした.

【結果】生理的肘外反角度において,野球肘である対象群は14.2±3.9°,野球肘既往無しの比較群は10.0±4.4°で対象群は比較群に比べて有意に高値を示した(p<0.01).

【まとめ】成長期野球肘を有する対象群が野球肘既往無しの比較群に比べ,生理的肘外反角度が高値を示したことから,成長期野球肘において生理的肘外反角度が発生因子の1つとして関連があると推測された.今後,他の因子(練習時間・投球数)との関係も検討し,発生因子についてのアプローチを考えていきたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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