理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-474
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骨・関節系理学療法
外反母趾矯正靴下の着用による効果
神谷 奈津美浦辺 幸夫山中 悠紀平山 真由子坂光 徹彦新宅 光男
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キーワード: 外反母趾, 靴下, 足圧中心
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抄録

【目的】外反母趾の発生率は女性が男性に比べ約10倍高い.外反母趾角の増加による足部のマルアライメントや母趾外転筋の不全に伴って、疼痛、バランス能力の低下、歩行障害などが惹起される.外反母趾の治療や予防対策として装具や靴選びがなされているが、今回外反母趾角の減少を目的とした「外反母趾矯正靴下(広島大学と(株)コーポレーションパールスター社との共同開発、特願2008-111012号)」を作製した.この靴下の有効性を明らかにするため、裸足、市販靴下の着用時と比較した.
【対象と方法】ボランティアによる健康成人女性50名を対象とした.測定項目は、外反母趾角、足圧中心前方移動距離、Functional Reach Test距離(FRT)として、裸足、市販靴下、外反母趾矯正靴下の3条件で比較を行った.外反母趾角の計測は第1趾中足骨と第1趾基節骨の側縁からなる角度を計測した.足圧中心前方移動距離は、足圧分布測定装置(Zebris社)上で静止立位10秒間とらせた肢位から、前方へ最大荷重を3秒間保持可能な位置まで行わせ、その距離をもとめた.その際ステッピングがみられた場合は除外し、3回の平均値を算出した.これを足長で除し、標準化した.FRTはファンクショナルリーチ測定器(OG技研社)を用いて、3回の平均値を算出した.統計学的分析は裸足、市販靴下および外反母趾矯正靴下の3条件間の各項目を、一元配置分散分析を用いて比較し、危険率5%未満を有意とした.本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】外反母趾角は裸足、市販靴下と比較し、外反母趾矯正靴下では最も小さい値となった(p<0.01).また、足圧中心前方移動距離とFRTは外反母趾矯正靴下着用にて延長した(p<0.01~0.05).
【考察】外反母趾角が減少したことは、外反母趾矯正靴下の効果を反映したものであると考えられる.本靴下には、足部内側の第一趾中足骨骨幹部にパッドを内縫しており、解剖学的に母趾外転筋の走行に合わせて製作されている.このパッドにより母趾外転筋に刺激が加わったことで、母趾の外反位が矯正できることを確認した.また本靴下の着用で、足圧中心前方移動距離およびFRTの延長がしたことは、前足部への荷重がしやすくなったことを示唆している.対象が健康女性であり、外反母趾による疼痛の愁訴や母趾の可動性低下、母趾外転筋の不全などが著しくないことを考えると、本靴下による予防効果も期待できるのではないかと考えた.
【まとめ】健康女性において外反母趾矯正靴下の効果を、裸足、市販靴下と比較し、検証した.外反母趾矯正靴下の着用により、外反母趾角の減少、足圧中心前方移動距離およびFRTの延長を認めた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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