理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-476
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骨・関節系理学療法
足趾運動機能に関連する因子の抽出
水野 修平尾田 敦成田 大一石川 大瑛橋本 奈苗溝畑 日出昌
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キーワード: 足趾, 運動機能評価, 把持力
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抄録

【目的】足趾は,立位姿勢の保持や歩行時の立脚後期における推進力の効果器及び伝達器として重要である.足趾の把持力に関してはこれまで多く報告されている.一方,器用さとしての足趾運動機能については,高齢者の転倒予防と関連があるといわれているが,未だに報告は少ない.今回,足趾運動機能を中心として機能評価やアンケート調査を実施した.その結果どの因子が足趾運動機能と関連があるか検討した.
【方法】対象は,研究の内容を説明し同意を得られた健常成人35名70足(年齢22±4.4歳,身長165.3±8.4cm,体重56.6±9.2kg)である.過去半年間に下肢の整形外科疾患の既往がある者は除外した.評価項目は,足趾運動機能,足趾把持力,足趾柔軟性{(足長-全趾最大屈曲位での足長)/足長×100},アーチ高率(舟状骨高/足長×100),30秒間開眼片脚立位での重心動揺(アニマ社製GS-3000による総軌跡長・矩形面積),外反母趾角(第1趾側角度),垣屋らによる浮き趾スコア,野田式扁平足分類,長谷川らによる足趾機能評価基準(グー・チョキ・パーの遂行の程度),アンケートによる過去・現在の運動歴や既往歴などの調査である.足趾運動機能の評価にはロードメジャーを改良した自作の測定機器を用い,30秒間の回転距離を10cm単位で測定した.あらかじめ健常16足で測定機器の再現性を確認したところ,級内相関係数はρ=0.894であった.統計解析は,足趾運動機能を目的変数とし,上記の項目を説明変数としてStepwise法による重回帰分析を行った.
【結果】抽出された変数(標準偏回帰係数β)は,足趾柔軟性(0.460),足趾把持力(0.376),足趾機能評価基準のパー(0.343),アーチ高率(0.297),現在の運動の有無(0.258),体重(0.213)であり,いずれも統計的に有意であった.決定係数は0.517(p<0.01)であり,モデルの適合性が確認された.
【考察】今回,足趾運動機能の評価は30秒間の最大努力による連続運動で行った.この運動は足趾によるパワー系の評価といえるので,足趾把持力は必要な要素の一つである.この運動はまた,運動効率から考えると,少ない回数で回転距離をかせぐことが望ましく,足趾の柔軟性の要素が必要である.また,足趾機能評価基準のパーが可能であるということは,母趾外転筋や小趾外転筋,骨間筋,母趾内転筋などの足部内在筋による足部の多関節制御下での足趾屈伸運動が可能であることを示唆する.このことは結果的にアーチ高を維持するための要因でもあると考えられる.一方,重心動揺の変数が抽出されなかったことは,静的立位場面では足趾の重要性が低いとする先行研究を支持している.これらを総合すると,足部形態を含めた足趾の運動に関わる重要な因子が相互に影響しているのが足趾運動機能であり,今回の評価は臨床的に重要な足趾機能全般の能力が関与している.ただし,器用さを真に反映しているのかどうかは現段階では不明確であり,今後の課題である.

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© 2009 日本理学療法士協会
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