理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-486
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骨・関節系理学療法
疾患部位が30秒椅子立ち上がりテストと等尺性膝伸展筋力の関係に及ぼす影響
山本 哲生山崎 裕司門田 裕一廣瀬 大祐
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抄録
【はじめに】
30秒椅子立ち上がりテスト(以下CS-30)は,簡便に下肢筋力を推計できる評価方法として臨床的に広まりつつある.しかし我々の行った高齢者における検討では,膝伸展筋力の筋力水準の高い対象者ではCS-30と筋力の関連は弱く,CS-30の結果の良いものは身長との関連が強かった.このことは,CS-30の成績に筋力以外の種々の要因が関連する可能性を示唆している.今回は対象者の疾患の相違が検査結果に及ぼす影響について,変形性膝関節症群と腰部脊柱疾患群に分類し,両群間での等尺性膝伸展筋力とCS-30の関係について検討を行った.
【対象・方法】
対象は膝関節もしくは腰部脊柱に整形外科的疾患を有し,当院での保存的な外来加療中の症例で計測及び研究に同意が得られた131名である.疾患の内訳は変形性膝関節症,腰部脊柱管狭窄症,胸椎・腰椎圧迫骨折,腰椎々間板ヘルニア等であった.計測は急性期の症状が落ち着き,疼痛などによる動作の制限がみられない状態で行った.なお,今回の研究では膝関節と腰部脊柱以外の疾患部位を有する症例及び,膝関節と腰部脊柱両方に疾患を有する症例は除外した.変形性膝関節症群は69名(男性5名,女性 64名),年齢71.2±7.8歳,身長149.5±5.6cm,体重55.0±8.3kg,BMI 24.5±2.9であり,腰部脊柱疾患群は62名(男性 16名,女性 46名),年齢 68.4±10.5歳,身長151.9±9.8cm,体重55.6±9.3kg,BMI24.1±3.6であった.CS-30は,背もたれ・肘掛けのない40cmの踏み台を用いて実施した.膝伸展筋力はアニマ社製徒手筋力測定器μ-TasF1を使用し,ベッド上端座位,下腿下垂位での等尺性膝伸展筋力を測定した.左右とも3回の測定を実施し,左右の最大値の平均を体重で除した値を等尺性膝伸展筋力(kgf/kg)とした.両群におけるCS-30と等尺性膝伸展筋力との関係をPearsonの相関係数を用いて検討した.
【結果・考察】
変形性膝関節症群におけるCS-30の平均値は14±4.6回,等尺性膝伸展筋力は0.39±0.11kgf/kgであった.腰部脊柱疾患群におけるCS-30の平均値は15±4.1回,等尺性膝伸展筋力は0.44±0.12kgf/kgであった.等尺性膝伸展筋力は腰部疾患群で有意に大きかった(p<0.01).変形性膝関節症群においては,CS-30と等尺性膝伸展筋力との間にr=0.51の有意な相関を認めた(p<0.01).一方、腰部脊柱疾患群では,r=0.25と有意な相関は見られなかった.以上のことから,CS-30は変形性膝関節症に対しては,下肢筋力の指標となり得るものの,腰部脊柱疾患に関しては妥当性が低くなることが示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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