理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-487
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骨・関節系理学療法
足関節自動運動と静脈血流速度の変化
小森 博人福島 慎吾内田 学
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抄録
【目的】
2004年4月より肺血栓塞栓症予防管理料が保険適応となり、理学療法分野においても早期離床や積極的な運動、弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法による深部静脈血栓症の予防が推奨されている.特に足関節の自動運動は臥位状態でも可能なため、容易に施行されている.しかし過去の研究においては自動運動の速度に関した報告はなく、当院でも症例の状態やセラピストにより様々である.今回、自動運動の速さが静脈血流速度にどのような影響を与えるのか検討することを目的とした.
【方法】
対象は健常男性9名、平均年齢29.4±5.9歳(平均身長167.8±5.6、平均体重60.9±7.5)であり過去に血管病変などの既往がなく、足関節底背屈可動域制限のない者を対象とした.測定機器は超音波診断装置(PHILIPS社HD11)を用い、足関節底背屈自動運動時の右大腿静脈血流速度をパルスドプラにて測定した.なお自動運動は背臥位で膝関節伸展位にて40回/分(以下自動運動40)、50回/分(以下自動運動50)、60回/分(以下自動運動60)、70回/分(以下自動運動70)、80回/分(以下自動運動80)の速さで実施した.対象には本研究の主旨を説明し同意を得た後に測定を行った.統計解析は内径と身長、体重、血流速度の関係性についてPearsonの相関係数を用いた.また自動運動による血流速度の変化については一元配置分散分析を行い、得られた主効果についてTukeyを用いて多重比較検討を行った.なお有意水準は5%とした.
【結果】
右大腿静脈径は0.76±0.17cmであり、右大腿静脈の血流速度は、安静時で29.6±4.9cm/s、自動運動40で44.6±16.2cm/s、自動運動50で48.7±17.2cm/s、自動運動60で50.4±16.8cm/s、自動運動70で57.1±25.2cm/s、自動運動80で62.3±27.7cm/sであった.右大腿静脈径と身長、体重、血流速度は相関がなく、血流速度の変化は自動運動の速度にのみ影響を受ける特異性が認められた.各血流速度においては全ての自動運動速度において正の相関を認めた.また安静時-自動運動80間において有意差を認めた.他の測定条件間には有意差は認められなかった.
【考察】
本研究の結果から大腿静脈径は血流速度の変化に有意差を認めなかった.また安静時-自動運動80以外においては有意差を認めなかった.しかし有意差は認めなかったものの、自動運動速度が速くなるにつれて静脈血流速度は高い傾向を示した.深部静脈は周辺の筋組織からの圧力により制御されており、足関節底背屈自動運動の速度が静脈血流速度に影響を与えることが示唆された.しかし今回は自動運動時の足関節底背屈角度までは規定しておらず、今後の測定条件の再検討が必要であると思われる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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