理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-489
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骨・関節系理学療法
着地動作時における足関節固定の有無による力学パラメータの変化
山本 哲堀尾 暁粟田 倫充寺田 秀範櫻井 愛子
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抄録
【目的】
下腿骨、足部外傷後の患者において、足関節可動域制限はしばしば起こり得る障害である.足部は、立位等の動作時に外部と接する唯一の部位であるため、足部・足関節の障害が身体全体に影響を及ぼすことが推察される.よって、足関節可動域制限のある患者の接地動作では、着地時における衝撃吸収のための下肢のストラテジーが健常者とどのように異なるのかを観察することが重要である.本研究では、健常成人の足関節にテーピング固定を施すことにより模擬的な足関節制限を作り出し、片脚着地時における力学パラメーターの違いを示すことを目的とした.その結果からジャンプ、走行時に必要とされる着地動作においての各関節にかかる負担や理学療法について検討したので報告する.
【方法】
対象:整形外科疾患を有していない健常男性10名(21-34歳).被験者には実験前に施行内容の説明を行い、同意を得た.方法:20cm台から片脚着地.動作施行前に十分な練習をし、ゆっくり静かに着地するように指示した.テーピング固定は足関節軽度底屈位での固定とし、テーピングの有り、無しの2条件を被検者毎に各々10回実施した.計測には、三次元動作解析装置(VICON MX、カメラ10台)と床反力計(AMTI)を用いた.マーカは臨床歩行分析研究会の推奨する11点に貼付し、同研究会の解析ソフトウェアDIFF Gait、WAVE EYESを用いて床反力上下成分、関節角度、関節モーメント、パワーを算出した.算出した関節モーメント、パワーは、各被験者の身長と体重で正規化し、着地動作時における各パラメーターの最大値を求めた.各被験者における10試行の平均値を代表値とし、固定無し、固定有りの2条件における差をt検定にて求めた.
【結果】
固定により股関節屈曲角度、膝関節屈曲角度、膝関節伸展パワーが有意に小さくなった.(p<0.05)また、床反力が大きくなり、膝関節伸展モーメント、足関節角度が小さくなる傾向を認めた.
【考察】
足関節の固定によって下肢関節角度が減少し、同時に膝関節伸展筋群の遠心性収縮による衝撃吸収が減少したことにより床反力が増加したと考える.床反力が増加することから、下肢関節への衝撃の増加が予想される.したがって、下腿骨骨折等で足関節背屈制限を有する患者の着地動作においては、衝撃による骨折部への応力により骨折部の炎症の増悪、ひいては再骨折の恐れが考えられるため、ジャンプ、走行などの高負荷運動は慎重に行う必要があると考える. また、足関節の可動域制限が、他の下肢関節の可動性に影響を及ぼし、筋出力が発揮されにくくなることを示唆しており、当該関節のみならず、代償動作など全身への影響を考慮した評価、治療が求められる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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