抄録
【目的】
頚椎疾患や姿勢異常の治療法として睡眠中の寝姿勢は重要で適切な枕の使用が求められる.そこで、理学療法の良い治療効果を持続させる意味においても、当院では患者に合わせた枕を勧めている.今回、当院で行っている枕処方のシステムと、処方した患者様に対してアンケートと計測を行ったのでここに報告する.
【対象および方法】
対象は、平成20年1月から10月までに、当院で枕を購入された22名に実施した.その内、頸部に痛みがある群(以下A群)12名(66.75±12.4歳)、疼痛はないが姿勢に異常がある群(以下B群)10名(68.52±7.8歳)とに分けた.処方は頚椎弧測定器(登録実用新案第3037703号)を用いて、その計測値に応じて1号から5号までの規定の枕から選別した.測定方法は、大後頭隆起と第7頚椎棘突起を結ぶ線から、頚椎前彎の頂点までの垂線の距離によって求める.その後、背臥位で患者に直接枕を当て、主観の基に枕を選択する(特許出願2000-121983:枕の選択アドバイスシステムに準ずる、ロフテー株式会社製)を選択する.A群とB群に処方し、患者それぞれにフィットするように、頸部と頭部を結ぶ線が前方に5°傾き、背臥位での顎と前頭部を結ぶ線がフラットになるようPTが調整した.また、この枕は側臥位にも対応しており、側頭部から肩峰までの距離を補う高さにし、頭部と脊柱のラインをベットと平行にした.主観的データと客観的データを統合するために、16号整形外科の山田朱里医師が提唱する日整会治療成績判定基準改変pillow score(以下PSとする)とVisual Analog Scale(以下VASとする)、それと頚椎弧を測定し、枕の使用前と使用後を比較した.観察期間は平均8.5週であった.
【結果】
PSは調整前A群5.5±1.3点(頚椎弧21.3±2.5mm)B群5.5±2.1点(頚椎弧20.7±3.4mm)が調整後A群1.8点(p<0.05)B群2点(p<0.05)と有意に改善されていた.頸部に痛みがあるA群には、VASで調整前後で比較したところ、調整前8.3±2.2、調整後2.5±0.9(p<0.05)と疼痛の軽減が見られた.
【考察】
日々の痛みや寝姿勢など、解剖や運動学などの知識を習得しているPTが問診し処方する事により、痛みの軽減や高い改善率が得られたと考える.今後も症例を増やしていく中で、枕はPTが処方することの意味を広めて行きたいと考える.