理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-353
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骨・関節系理学療法
特発性大腿骨内側顆骨壊死の非観血的治療例に対するリハビリテーションアプローチ
田中 隆晴伊藤 昭上井 雅史平野 弘之
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キーワード: SPONK, 疼痛, 減量
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抄録
【目的】膝関節の特発性骨壊死(spontaneous osteonecrosis of the knee:以下SPONK)は60歳以上の高齢者に多く発症する.女性に多く、大腿骨内側顆部関節面に好発する.治療は壊死部の進行度に応じて選択される.重症例では人工関節の適応となる.右大腿骨内側顆骨壊死と診断され、手術療法を勧められたが保存療法を選択した1症例(62歳、女性、stage2)を担当する機会を得た.今回我々は、SPONKに対する保存療法のリハビリテーションの経過と非観血的治療例の自然経過(natural course)について報告する.
【方法】あらかじめ本症例に倫理規定について説明と同意を得た.経過観察期間が11ヶ月であった.膝関節可動時の疼痛の程度をVisual Analogue Scale(以下VAS)で評価した.体重、10m最大歩行速度(以下10mMWS)、大腿周径を評価した.リハ(平均頻度11回/月)の内容が運動療法と干渉波のみであった.期間中はラテラルウエッジを装用していた.
【結果】施療11ヵ月目に、右膝関節屈曲時のVASが初期8から最終2と改善していた.伸展時のVASが初期8から最終0と改善していた.体重が初期70.0kgから最終66.0kgに減少していた.10mMWSが初期8.43秒(18歩)から最終5.97秒(15歩)と改善していた.施療期間前後で大腿周径をそれぞれ膝蓋骨上縁から5、10および15cmで計測した.その結果、すべて減少していた.
【考察】本症例は日常生活での杖使用に難色を示した.膝関節への荷重軽減目的で減量を強く勧めた.その結果、体重が初期70.0kg(BMI:26.3)で右膝関節屈曲時のVASが8であったものが、最終66.0kg(BMI:24.8)でVASが2と改善していた.変形性膝関節症の成書の示すように体重のコントロールが有効で、4kgの減量により荷重関節である膝関節への免荷傾向が得られ疼痛減少につながったものと考えられた.10mMWSが初期8.43秒(18歩)から最終5.97秒(15歩)と改善していた.これは疼痛改善により、最終時に正常歩行に近づいたためと考えられた.問題点が、大腿四頭筋筋力強化のためにホームエクササイズとしてSLRを指導していたが、運動が単純で回数を必要とするためにモチベーション維持が難しく大腿周径の増大に至らなかったことであった.今後の課題と考えている.
【まとめ】本症例は保存療法で疼痛が改善し日常生活を送ることができた.右膝関節屈曲時の疼痛が初期時に強かったため、本疾患に対して何よりも減量が有効であることを繰り返し説明し食事療法で減量を行なってもらった.大腿周径の増大には至らなかったが運動療法による筋力強化とラテラルウエッジの装用で症状の悪化と内反膝を防止することができたものと考えられた.治療が長期に渡るため、関節機能のみにとらわれず、食事管理、装具の装用などでSPONK患者のモチベーションを維持しつつ治療していくことが重要であると考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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