理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-358
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骨・関節系理学療法
人工股関節置換術後に大腿骨骨幹部骨折を呈した2症例
横地 雅和高山 茂之
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抄録

【はじめに】人工関節置換術は関節リウマチや変形性関節症患者の除痛効果が得られ、ADL、QOLの向上につながり満足な成績を得られることが多い手術法である.近年、人工関節の普及や高齢者の増加および活動性の向上に伴い人工関節周囲骨折の頻度が増加している.今回、人工股関節置換術(以下THA)後に大腿骨骨幹部骨折を呈した2症例の理学療法を経験した.その治療経過とともに若干の考察を加え、ここに報告する.

【症例紹介】症例1:50歳代前半の男性.右THA施行した1ヶ月後に階段から転落し、受傷した.診断名は大腿骨骨幹部骨折(Johansson分類TypeIII)と診断され、受傷2日後にプレート固定術を施行した. 症例2:70歳代後半の女性.右THA施行した2年後に転倒し、受傷した.診断名は大腿骨骨幹部骨折(Johansson分類TypeI)と診断され、受傷2日後にドールマイルズにて固定し、術後4日後より理学療法を開始した.既往歴は両変形性膝関節症の既往がみられ、術前の膝関節のROMは伸展-15°、屈曲130であった.

【経過および運動療法】症例1:術後翌日より理学療法開始し、術後4週間は免荷であった.術後27日目に膝関節全可動域を獲得した.術後28日目より1/2P,W,B開始し、術後34日目のX-P上で良好であったため、術後35日目より全荷重が許可された.術後42日目に自宅退院となる.現在、受傷後7ヶ月が経過しているが経過は良好である. 症例2:理学療法開始時より疼痛に応じて全荷重が許可された.術後5日目に平行棒歩行訓練開始.術後9日目に歩行器歩行訓練開始.23日目にT字杖歩行訓練開始.術後26日目に膝関節屈曲130°を獲得し、術後40日目に自宅退院となった.現在、受傷後3年が経過しているが経過は良好である.
運動療法は受傷後2週までは浮腫除去、股関節内・外転運動、相反抑制を利用した膝関節屈曲可動域訓練を実施した.2~4週では、大腿四頭筋(広筋群)の反復収縮を実施した.4週以降は癒着、拘縮部位に直接伸張を加えた.

【考察】人工関節周囲骨折の治療としては手術による固定性が大きく影響していることは言うまでもないが、PTとしては人工関節のLooseningや再骨折を起こさないことが必要であると考えられる.そのため、過度なROM訓練や荷重訓練に配慮し運動療法を展開した.ROM訓練については組織の修復に考慮し、術後4週までは自動・自動介助でのROM訓練を中心に実施し、荷重訓練には立位訓練を多く実施し、筋力の回復に合わせて歩行訓練を実施した.また、THA術後の大腿骨骨幹部骨折の運動療法を実施する際には罹患関節のみの機能改善だけでなく転倒予防にも着目して体幹機能や下肢のアライメントに考慮して実施していく必要があると考えられた.

【まとめ】THA術後に大腿骨骨幹部骨折を呈した2症例を経験した.人工関節のLooseningや再骨折を起こさないことに配慮した運動療法を実施し、良好な結果が得られた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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