理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-359
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骨・関節系理学療法
中学生における足部アーチの発達状況と学校指定靴が運動課題遂行能力に及ぼす影響
尾田 敦奥山 真純成田 大一熊王 寛人加藤 望
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抄録

【はじめに】昨年の本学会において,我々は小学生の扁平足と外反母趾の実態調査の結果から,外反母趾発生にはアーチ形成の遅れが影響している可能性があることを報告した.また,多くの中学校では学校指定靴(指定靴)が使用され,体育授業でも指定靴で行われている実態や,生徒が持つ足部愁訴と指定靴の関連性について報告した.これらの結果を踏まえ,中学生におけるアーチ形成率の現状と,それに大きく影響すると思われる指定靴での運動課題遂行能力について検討したので報告する.
【対象と方法】市内の某中学校(全校生徒881名)にご協力いただき,本人と保護者から同意を得た1~3年生までの87名(男子42名,女子45名)を対象として足部形態の調査を行った.足部形態の評価には,Pedoscope上自然立位での撮影画像から得た足長・足幅・接地面積から接地率を算出し,野田式分類による扁平足評価を用いた.また,アーチ高は舟状骨と足長からアーチ高率を算出した.さらに,各学年の卓球部・バレーボール部・バスケットボール部・バドミントン部に所属する生徒のうち無作為に35名(男子16名,女子19名)を選抜(選抜群)し,部活で使用するシューズ(運動靴)と指定靴での2条件において,T字ドリルと立ち幅跳びの2つの運動課題を行わせた.T字ドリルは一辺3mの線をT字上に床に引き,ラン・サイドステップ・バックランで走路を連続2回行わせて所要時間を測定した.立ち幅跳びは新体力テストに準じた.条件ごとに2回ずつ行い,T字ドリルは2回の平均値を,立ち幅跳びは成績のいい方を記録とした.
【結果】対象者87名両足174足の野田式分類における扁平型footprintの割合は,1年17.2%,2年8.3%,3年12.5%で,昨年の調査における小学6年生30名の結果(21.7%)より減少していた.しかし,アーチ高率は,1年10.5±3.1%,2年10.6±2.7%,3年11.8±2.8%で,小学6年生(11.9±2.5%)と差がなく,接地率についても同様の傾向であった.選抜群におけるT字ドリルの平均タイムは指定靴と運動靴でそれぞれ10.99sec,10.49sec,立ち幅跳びの平均跳躍距離は指定靴と運動靴でそれぞれ168.8cm,178.2cmで,いずれの課題も運動靴での成績が有意に良好であった.
【考察】足アーチは12歳頃に完成するとされているが,中学生でもなお不完全であった.子どもの体力低下の原因として指摘されている運動機会の減少は,足アーチ発達の阻害因子でもある.一方,中学生では積極的な課外活動が行われるようになるので,よりアーチ形成率が高いと予想したが,実際は小学6年生と同等であった.その背景には,指定靴では最適なサイズの靴を選びにくい上に,大多数の生徒は大きめの靴で踵を潰し,紐をゆるめにして履く状況がある.運動靴で課題遂行能力が向上したのは,サイズが合わなくても紐をしっかり結んで使用していたためと思われる.したがって,アーチ形成を促すには,指定靴のサイズ選択や履き方の教育が重要であろう.

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© 2009 日本理学療法士協会
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