抄録
【目的】左膝蓋骨周囲に痛みを有する一般市民ランナーに対し,入谷式足底板を作製した.歩行時,両膝に大腿内旋・下腿外旋のいわゆるknee in動作(以下,knee in)を認め,左が著明であった.足底板作製の目的をknee inの軽減および左下肢立脚期の時間短縮とし,良好な結果が得られたので報告する.
【症例】今回の報告に際し十分な説明を行った上で同意を得た30歳代前半の女性,診断名は左膝内障,1ヶ月前より週3回,5km程度の練習を行っていた.2週前の練習にて21kmを走行後,左膝膝蓋骨周囲,右足舟状骨部周囲に痛みを感じるようになり,その後は数キロのジョギングでも同部位に痛みを感じていた.
【評価および足底板装着後の結果】評価時の痛みは,走行時に左膝蓋骨周囲,しゃがみ込みでは軋轢音を伴い出現,歩行時は出現しなかった.右足部舟状骨部周囲の圧痛は認めたが,動作時は出現しなかった.静的評価では,左の踵骨回内,内側縦アーチ低下,母趾回内変形を認めた.横足根関節のグレードは右2,左2であった.歩行では,入谷の分類により右が蹴り出し脚,左が踏み出し脚で左立脚期の時間的延長を認めた.両側knee inを示し左が著明,それに伴い前額面では左骨盤の外側偏位,矢状面では左膝屈曲位により早期にheel offが出現していた.入谷式機能的評価は,両側後足部回外を示唆,下腿筋スパズムは右内側部,左外側部に認めた.直接的評価では,両側ともに距骨下関節回外,第1列底屈,第5列外がえしとした.内側楔状骨挙上は右あり,左なし,果部誘導は両側外果挙上,長パッド:右3mm,左4mmとした.横アーチは中足骨前方:右1mm,左0.5mm,後方:右2mm,左2mm,楔状骨:右3mm,左4mmとした.足底板装着後走行時・しゃがみこみ時の痛みは消失した.歩行では,右が踏み出し脚,左が蹴り出し脚に変化した.立脚期時間およびheel offの出現時期も左右ほぼ同じとなり,knee inも減少した.
【考察】本症例の痛みの特徴として膝蓋骨周囲つまり膝前面にあること,knee inによる膝の捻れおよび屈曲位との関連性が高いことが挙げられる.膝前面の痛みに対し,膝屈曲位から生じた体幹後方重心による膝蓋骨周囲へのストレスと判断し,早めの体重移動を足底板の目的とした.具体的には初期での距骨下関節回外および高めの外果挙上,立脚中期前半での高めの楔状骨横アーチ,中期後半から推進期での第1列底屈,低めの中足骨横アーチとした.また,knee inに対しては下腿内旋,大腿外旋を引き出す目的で第1列を底屈,左足部内側部の落ち込みによるアライメント異常からもknee inは起きていることから,距骨下関節回外および高めの外果挙上および内側楔状骨挙上ありとした.今回リハ室内での痛みは消失したものの,長距離走行における左膝および右足舟状骨部周囲の症状について解決されたとはいえない.
発表当日はその後の経過も含め報告いたします.