理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-387
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骨・関節系理学療法
ストレッチポールを用いたコアセラピーが慢性肩こり・腰痛者の柔軟性に及ぼす効果:無作為化対照研究
蒲田 和芳増田 圭太伊藤 一也浦田 侑加
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抄録
【目的】慢性腰痛や肩こりは筋緊張亢進を主体とする運動器疾患であり、筋緊張緩和を目的とした対症療法が広く実施されている.一方、ストレッチポール(SP)(LPN社)を用いたエクササイズの健常者に及ぼす効果として、脊椎のリアライメント効果(杉野2006)、胸郭拡張機能改善(秋山2007)、肩関節の柔軟性(森内2007)、胸郭スティッフネス低下(伊藤2007)などが報告され、体幹周囲の筋緊張軽減に効果的であることが示された.本研究では、慢性肩こり・腰痛者に対するSPを用いた骨盤・胸郭リアライメントエクササイズ(PTR)の効果を検証することを目的とした.研究仮説は、(1) ストレッチポールを用いた骨盤・胸郭エクササイズは体幹の柔軟性を改善する、(2)肩関節の柔軟性を改善する、であった.

【方法】研究プロトコルは広島国際大学倫理委員会の承認を得た.対象者の取込基準は慢性の肩こりまたは腰痛を持つ20-45歳であり、除外基準は急性腰痛、手術歴、内科的リスク、脳血管障害、精神障害、コミュニケーション障害がある者とした.ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した19名の被検者は、無作為に2群に割り付けられた.
介入は、骨盤・胸郭リアライメント(PTR群)と静的ストレッチ(SS群)とした.介入頻度は1日2回、1週間5回以上とし、介入期間は4週間とした.観察因子は体幹前屈角度(FFD)と肩関節可動域(Apley’s test)であり、測定者は盲検化された.結果の評価は95%信頼区間(CI)を用いた統計学的推定により行った.

【結果】介入前後の体幹前屈可動域の改善量はPTR群55.5mm(95%CI, 13.1-97.8)、SS群38.5mm(95%CI, 13.6 - 63.4)であった.介入前後の肩関節可動域の改善量は、PTR群44.1mm(95%CI, 2.8 -85.4)、SS群26.9mm(95%CI, 12.9 -40.9)であった.

【考察】PTRおよびSSはともに慢性肩こり腰痛者の柔軟性を改善させた.両群間に有意差は認められなかったが、PTR群の方が著明な改善を呈した例を含んでいた.この結果は、健常者を対象とした先行研究(杉野2006、森内2007)を支持し、PTRが慢性肩こり・腰痛者において効果的に柔軟性を改善することを示唆する.そのメカニズムとしては、ストレッチポールで行われる脊椎の広範囲に対する関節モビライゼーション効果および胸郭と骨盤のリアライメント効果によるものと考えられる.本研究の問題点として統計学的パワーの不足が挙げられるが、盲検化無作為対照研究のデザインを用いた点、期間を通じて介入状況を確認した点などを考慮すると信頼性の高い研究といえる.以上により研究仮説は支持されたと結論付けられる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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