理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-391
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骨・関節系理学療法
高校野球選手における腰痛と股関節内・外旋可動域との関係
貴志 悠矢貴志 真也鳥居 久展岩淵 和人片岡 大輔川上 基好
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キーワード: 野球, 腰痛, 股関節
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抄録

【目的】
野球において腰痛は肩関節、肘関節に次いで多い障害と報告されている.投球やバッティング動作において下肢で生じたエネルギーは、股関節を軸にした体幹のねじり動作を通じ、最終的に指先やバットに伝える全身運動であるとされている.投球・バッティング動作の軸となる股関節に可動域(以下ROM)制限があることで運動連鎖に破綻をきたし肩・肘の障害がおこるとの報告はされているが、腰痛に関する報告は少ない.そこで今回、股関節内・外旋ROMと腰痛との関連を検討したので報告する.
【対象および方法】
対象は、本研究内容を説明して同意を得た高校硬式野球部員27名(腰痛群7名、非腰痛群20名)で、その内訳は右投右打25名(軸足右、非軸足左)、左投左打2名(軸足左、非軸足右)であった.今回、右投左打、右投両打の選手は軸足が両足となるため除外した.測定方法は日本整形外科学会が定める関節可動域テストに準じて股関節内・外旋ROMを測定し、各ROMの左右差と左右差があった運動に対して腰痛群、非腰痛群とを比較した.統計処理にはstudentのt検定を用いて、危険率5%未満とした.
【結果】
内旋ROMは腰痛群の軸足41.0±7.4°(mean±SD)、非軸足25.0±7.9°、非腰痛群の軸足42.6±10.3°、非軸足41.9±10.2°で、腰痛群の非軸足が有意に低下していた(p<0.05).外旋ROMは腰痛群の軸足55.0±5°、非軸足59.0±9.6°、非腰痛群の軸足54.3±17.7°、非軸足56.3±7.6°で有意な差は認められなかった.また、内旋ROMの左右差の比較では腰痛群16.0±2.2°、非腰痛群8.9±7.5°で腰痛群に有意な左右差があることが認められた(p<0.05).
【考察】
野球において体幹・股関節回旋動作は投打ともに重要になる動作である.今回の結果では、腰痛を訴える選手において非軸足の股関節内旋可動域低下が認められた.これは、投打での体幹・股関節回旋動作時に体重移動に必要な非軸足側の股関節内旋可動域が不十分となり、その代償動作として骨盤・腰椎での過剰な回旋により、腰椎部に力学的ストレスが生じているのではないかと考えられる.以上のことから、股関節内旋可動域の低下が野球において腰痛を発生させる因子となり得る可能性が示唆された.
【まとめ】
今回、27名の高校野球選手を対象に股関節内・外旋ROMと腰痛との関連を検討した結果、腰痛群の非軸足股関節内旋ROMに有意な低下が認められた.また、内旋ROMの左右差の比較でも、腰痛群に有意な左右差が認められた.したがって、非軸足の股関節内旋ROMの低下が腰痛を発生させる因子となり得る可能性が示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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