理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-393
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骨・関節系理学療法
呼吸筋エクササイズによる脊柱アライメントの経時的変化
大林 弘宗浦辺 幸夫山中 悠紀
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抄録

【目的】スポーツ動作において、脊柱弯曲の過剰な増大は動作中の異常姿勢を惹起し、障害発生を導くことがある.障害予防のためには脊柱のアライメントをコントロールするエクササイズが重要となる.アライメントコントロールを行うためには胸部や腹部の体幹深部筋を刺激することで、脊柱の安定化を得ることが必要であると言われている.
今回筆者らは、呼吸筋エクササイズに注目した.呼吸筋は横隔膜、肋間筋、呼吸補助筋からなる.安静呼吸時では主に横隔膜や肋間筋が用いられているが、努力呼吸時には呼吸補助筋も補助的に働く.呼吸補助筋には先にあげたような多くの体幹深部筋が含まれており、努力呼吸を課すエクササイズによって呼吸筋に刺激を与えることで脊柱アライメントをコントロールできるのではないかと考えた.筆者らは、先行研究において、呼吸筋エクササイズによって胸椎の後弯が減少することを明らかにした(2008).しかしながら、エクササイズの効果がどれだけ持続するかについては不明である.本研究の目的は、呼吸筋エクササイズが脊柱アライメントに対して経時的変化をもたらすかを明らかにすることである.
【方法】対象は体幹に整形外科的疾患がない健康成人男性15名とした.まず、対象の静止立位での体幹アライメント(腰椎角、胸椎角)を測定した.測定にはスパイナルマウス(idiag社、スイス)を用いた.次に、対象に呼吸筋エクササイズを10分間行わせた.エクササイズにはスパイロタイガー(idiag社、スイス)を用い、身長、体重をもとに呼吸量、呼吸回数などの負荷を規定した.エクササイズが終了した後、体幹アライメントの測定を2分ごとに10分間行った.統計学的検定には一元配置分散分析を用い、危険率5%未満を有意とした.本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】呼吸筋エクササイズ直後では胸椎の後弯が減少していた(p<0.05).しかし、2分後以降ではエクササイズ前の胸椎角との間には有意な変化はみられなかった.腰椎角についてはどの値も有意な変化がみられなかった.
【考察】胸椎の後弯が減少する理由として、脊柱起立筋などの動的支持機構の緊張の増大や、エクササイズによる胸郭の柔軟性の増加による伸展方向の運動を制限する要因の解消などが考えられる.今回の結果から呼吸筋エクササイズの脊柱アライメントへの効果は短期間しか持続しないことが示された.このことから、エクササイズによって脊柱起立筋が賦活され、一時的に筋緊張が高まることが推察される.本研究では筋電図や運動力学的な他のパラメーターによるエクササイズの影響を確認していない.その点を踏まえ、今後は長期の介入効果についての研究も進め、経時的な脊柱アライメント変更の効果があるのかを確認していきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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