理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-395
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骨・関節系理学療法
シンクロナイズドスイミング日本代表における傷害特性について
加藤 知生吉沢 剛
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抄録

【目的】今回、我々は第29回北京オリンピック大会シンクロナイズドスイミング(以下、シンクロ)日本代表選手団のメディカルスタッフ(トレーナー)として帯同する機会を得た.そこで、日本代表選出後、オリンピック予選および本大会を含む8ヶ月間の活動内容を報告するとともに、シンクロ選手の傷害特性について調査したので報告する.

【活動内容】1)選手団の医事管理 2)選手のケア、コンディショニング 3)ドクター不在時のケガ、病気への対応 4)ドクター不在時の薬品の管理 5)選手団の一員としての雑務などを行なった.このうち、本大会での選手のケア、コンディショニングは8月5日~8月23日の16日間行なわれ、対応者は選手9名全員、総対応数124件、最多受療者16回(デュエット競技、チーム競技出場)、最小受療者5回(チームテクニカルのみ)であった.処置内容はマッサージ89件、超音波32件、ストレッチング26件、徒手療法23件、テーピング7件、微弱電流3件、他(重複あり)であった.

【方法】対象は北京オリンピック開催年の前年の12月、国内最終選考会にて選出された日本代表9名、平均年齢24.8歳(23~27歳).調査期間は日本代表選出以降、北京五輪予選および本大会を含む8ヶ月間.検討項目は選手の傷害記録から1)代表的傷害部位 2)傷害の種類 3)傷害発生要因について検討した.

【結果】日本代表選出後、選手の練習および試合日数は8ヶ月間で189日.トレーナー対応日数は91日間であった.うち、長期連続対応となったのはオリンピック帯同の22日間である.1)傷害部位 腰部、肩および肩甲帯、股関節および大腿近位部に多い 2)傷害の種類 合宿中には使いすぎ症候群である障害が多いが、試合直前および試合日では打撲、肉離れ、骨折などの外傷が多くなった.3)傷害発生要因 打撲および骨折は近接する選手との接触にて生じていた.股関節内転筋群あるいは大腿直筋の肉離れは下肢のスピリット動作で多発し、ブースアップや巻き足時にも発生していた.

【考察およびまとめ】オリンピックはスポーツ選手が目標とする最高の舞台であり、かつ周囲からの期待も大きい.それゆえに、日本代表になってからの練習は質・量ともに過酷なものとなる.その間、ケガに対するケアやコンディショニングが重要となるのは言うまでもない.今回、8ヶ月間の長期にわたり傷害調査を行うことができた.この中で、いわゆる試合期である試合直前と試合日、それと訓練期である合宿中での障害発生に特徴があることがわかった.また、シンクロにおける傷害発生要因も「使いすぎによる傷害」だけでなく、外傷が多いことが確認された.今後は、さらに詳細を検討し、傷害予防につながる提言を行なっていきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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