理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-396
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骨・関節系理学療法
大学女子運動選手における足関節捻挫受傷と身体特性の関連性
中條 智志竹村 雅裕向井 直樹白木 仁宮川 俊平
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抄録

【背景および目的】
近年の競技スポーツ界における女性運動選手の活躍の一方で,女性運動選手の傷害が増加している.女子サッカー選手は男子と比較すると2~4倍の頻度で下肢の靱帯損傷が発生しており,その受傷機転の多くは非接触型外傷である.また,女子運動選手の身体能力要素と外傷発生には関係があるといわれている.しかし,現状では体力測定やメディカルチェックの結果と傷害との因果関係や傷害発生メカニズムが明確に認められていない.そこで,本研究の目的は大学女子運動選手の体力測定,メディカルチェックをプロスペクティブに実施し,足関節捻挫を受傷した選手の身体的特徴を明らかにすることとした.
【方法】
対象は運動部に所属する女子大学生52名(身長:164.9±7.2cm,体重:58.8±6.7kg,BMI:25.9±4.1)である.入学時(2005年4月,2006年4月,2007年4月)に体力測定(握力,上体起こし,長座位体前屈,反復横跳び,立ち幅跳び)及びメディカルチェック(全身関節弛緩性,顆間距離および果間距離,Q-Angle,Thigh Foot Angle,Leg Heel Angle,関節不安定性)を実施した.傷害調査期間は2006年4月から2008年9月とし,傷害データは大学内にある保健管理センターの受診記録より収集した.そして,受診記録より足関節捻挫を受傷した群と非受傷群の2群に分け,身体特性について比較検討した.統計ソフトはDr.SPSSII for Windowsを用いて,検定は対応のないt-検定を行い,有意確率はP<0.05をとした.なお,本研究は筑波大学大学院人間総合科学研究科倫理委員会の承認を受け実施した.
【結果】
外傷全体のうち下肢の割合は71.4%を占めていた.その中でも,足部,足関節が一番多く50.0%,次いで膝関節が12.5%,大腿部が7.1%であった.そして,足関節捻挫の割合は33.9%であった.足関節捻挫の受傷群,非受傷群間を比較すると,体力測定とメディカルチェックの各項目間に有意な差は認められなかった.
【考察】
今回,大学女子運動選手における足関節捻挫受傷と身体特性の関連性を明らかにすることはできなかった.女子運動選手は下肢筋力,神経筋コントロール,有酸素持続能力の不足がリスクファクターとして考えられると報告があるため,測定項目の再検討が必要である.さらに,対象者数を増やし,今後も調査を継続していく.

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© 2009 日本理学療法士協会
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