理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-446
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骨・関節系理学療法
変形性膝関節症における関連因子の検証
渡辺 博史古賀 良生大森 豪遠藤 和男
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抄録
【はじめに】我々は、変形性膝関節症(以下膝OA)の疫学因子として肥満や膝伸展筋力などを報告してきた.今回、関連因子の多変量解析でその関連性の大きさについて男女別に検討したので報告する.
【対象】新潟県十日町市松代地区で、2007年住民膝検診に参加した1465名(女性843名、男性622名)を対象とした.
【方法】膝検診内容は、問診(膝の外傷・膝痛・水腫の既往、膝痛の有無、正座、歩行能力など)と視触診(へーベルデン結節の有無、円背、下肢アライメント、lateral thrust(以下thrust)などの歩容、膝・股関節可動域、腫脹、圧痛所見、膝関節の動揺性など)で、また体組成及び筋力測定(身長、体重、体脂肪率、握力、膝伸展筋力)と立位膝関節前後X線撮影(以下X線)を実施した. X線画像から大腿脛骨角(以下FTA)をデジタイズして、膝OA病期は、Kellgrenの分類を参考に5段階とし、整形外科医1名が評価した.そして、grade 2以上を膝OAとして検診内容のすべての項目について膝OAとの関連性を検討した.年齢の影響を除外しても関連性を認めた項目に対し、問診・診察項目ごと男女別に多変量解析を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】問診項目のオッズ比の検討結果は、女性では、正座の可否6.5、膝痛の既往2.7、膝痛の有無2.7の順で高く、男性では、正座の可否5.3、膝痛の有無4.6、膝の外傷歴3.3の順で高い結果であった.診察項目において女性では、膝屈曲制限の有無4.6、圧痛の有無3.1、thrustの有無3.0、FTA 3.0、半月板所見2.4、体脂肪率2.0の順で、男性では、膝屈曲制限の有無7.4、圧痛の有無3.5、thrustの有無3.1、体脂肪率2.3、円背2.2、握力1.8の順でオッズ比が高い結果であった.
【考察】問診項目の結果において、女性では膝痛の既往が、男性では膝外傷の既往のオッズ比が高く差を認め、一般に外傷性膝OAは男性で高いとされることとの関連が示された.また過去(2000年の膝検診時)同様の検討において、女性でオッズ比の高かった円背や男性でオッズ比の高かったbody mass index (以下BMI)やFTAが、今回膝OAとの関連性が低かったことより、膝OAにおける関連因子項目の関連性が、加齢に応じて変化することが示唆された.今後は年代別に膝OAとの関連因子を検証し、縦断的に膝OAの発症・進行要因の項目を検討していく.
【まとめ】膝OAにおける関連因子について男女別に検証した.問診項目で女性では膝痛の既往、男性では膝外傷の既往の関連性が高かった.過去の検討との項目に差を認めたことより、膝OAにおける関連因子項目の関連性が加齢に応じて変化することが示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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