理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-455
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骨・関節系理学療法
頚椎椎弓形成術後患者に対する足底感覚刺激の介入効果
―シングルケースデザインでの検討―
袴田 暢中山 裕子細野 敦子山岸 豪
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抄録

【はじめに】頚椎椎弓形成術後患者において,術後も運動麻痺が残存し自立歩行獲得が困難,あるいは時間を要する症例がある.このような症例についての理学療法効果は十分に検証されているとは言いきれない.今回,我々は頚椎椎弓形成術後に運動麻痺が残存した症例に対し,足底感覚刺激を試みた.感覚刺激の立位バランスに対する効果を検討したので報告する.
【症例紹介】66歳女性.診断名,中心性頚髄損傷・頚椎症性脊髄症.平成20年6月9日転倒し歩行困難となる.同6月17日当院入院,6月24日第3~6頚椎椎弓形成術,左第4~5椎間孔拡大術施行.6月30日理学療法開始,7月26日足底感覚刺激を基礎水準期より介入開始した.介入時所見は両下肢MMT股関節周囲筋3~4,その他5,筋緊張は両下肢伸筋群,内転筋群で亢進.踵部の二点識別覚は右43mm,左38mmで,位置覚は異常所見を認めなかったが,振動覚は両側内果部が軽度鈍麻していた.歩行は病棟内歩行器自立であった.その後,8月30日T字杖歩行屋内自立にて自宅退院となった.
【方法】ABAシングルケースデザインを用いて実施.研究の主旨は事前に十分説明し同意を得て行った.基礎水準期A1は8日間,5セッションとし関節可動域訓練,筋力強化訓練,基本動作訓練,歩行訓練を行った.操作導入期Bは11日間8セッションとし,3種類の材質・硬度の異なるボールを足底で転がす課題をA1での訓練に追加した.治療撤回期A2は7日間5セッションとした.足底感覚刺激は1種類2分間,3種類を左右交互に施行した.効果判定はFunctional Reach Test(以下,FRT)を用いた.A1,A2では1回目FRT(FRT1)を測定し12分間の椅子座位後,2回目FRT(FRT2)を測定した.BではFRT1測定後,足底感覚刺激を施行しFRT2を測定した.検討はFRT1およびFRT2-FRT1の推移について行った.
【結果】A1でのFRT1の平均値は156.2mm,平均値+2SDの値(2SD値)は184.8mm,FRT2-FRT1の平均値-10.8mm,2SD値は22.4mmであった.BのFRT1でA1の2SD値を上回ったセッションは1回のみであった.FRT2-FRT1は8セッション中5セッションでA1の2SD値以上の値を示した.A2のFRT1は5セッション中4回A1での2SD値を上回り,FRT2-FRT1はすべてのセッションでA1の2SD値を下回った.
【考察】今回BでのFRT2-FRT1の改善は良好で,今回の訓練による即時効果は得られている可能性が伺われた.一方でBでのFRT1の改善は十分ではなく,経時的改善および刺激効果の持続性は十分とは言えなかった.今回の感覚刺激が頚椎椎弓形成術後患者において有効である可能性はあるが,刺激方法の妥当性についてさらなる検討が必要と思われた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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