理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-456
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骨・関節系理学療法
腰部脊柱管狭窄症患者における腰椎屈伸の動的分析
櫻井 愛子飯田 智恵黒澤 みどり草野 俊輔西山 誠藤田 順之石川 雅之福井 康之山本 澄子
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抄録

【目的】
腰部脊柱管狭窄症(以下,LCS)は,椎間関節や椎間板の変性などにより脊柱管が狭窄し,馬尾神経・神経根が圧迫を受けて下肢痛や間歇性跛行などの臨床症状を呈する疾患である.LCS患者の多くは,体幹筋の筋力低下,腰椎の可動域制限を呈すると考えられているが,筋力低下や可動域制限の結果として生じる動的な腰椎屈伸運動の定量的評価は行われていないのが現状である.今回,我々は,LCS患者の腰椎屈伸の動きの特徴を示すことを目的とし,座位における体幹屈伸の動作解析を行ったので報告する.
【方法】
健常成人4名(男性4名,25±0歳),国際医療福祉大学三田病院にミエログラフィ目的で入院したLCS患者5名(男性2名・女性3名,73.8±5.8歳)を対象とした.被験者には,実験前に研究内容を文書と口頭で十分に説明し,同意を得た.計測動作は,座位で前方を注視させたまま,胸を後方に移動させながら背中を丸くする屈曲動作と,胸を前方へ移動させながら背中を反る伸展動作とし,屈曲から伸展,伸展から屈曲の運動を無作為に10施行行った.動作計測には,三次元動作解析システム(VICON MX)を用いて,胸郭と骨盤に貼付したマーカから胸郭座標系,骨盤座標系を設定し,全体座標系に対する胸郭角度と骨盤角度,骨盤胸郭間の相対角度,骨盤に対する胸郭の前後方向位置を算出した.算出した値の最大前傾値,最大後傾値,変化量を求め,各被験者における10施行分の平均値を代表値とした.健常群,LCS群の比較には,Mann-Whitney U検定を用いた.
【結果】
胸郭角度,骨盤角度,相対角度,前後方向位置のそれぞれにおいて健常群とLCS群の比較を行った結果,LCS群は健常群に対して骨盤胸郭間の相対伸展角度が有意に小さく(p<0.05),骨盤前後傾変化量,骨盤胸郭間の相対角度変化量,骨盤に対する胸郭の後方変位位置が減少する傾向が認められた(p<0.10).
【考察】
腰椎は骨盤と胸郭間に位置し,相対的な位置関係や回転方向により,屈伸方向が決定される.今回の計測では,後方に移動した胸郭や頭部の質量を腹筋群で保持する屈曲動作と前方に変位した質量を背部筋群で保持する伸展動作を課題とした.LCS患者は骨盤胸郭間の相対伸展角度が有意に小さな値を示し,骨盤の前後傾角度が減少,後方への胸郭移動が減少する傾向を示したことから,狭窄肢位である骨盤胸郭間の相対伸展角度の減少だけでなく,腰椎より上部の頭部・胸郭位置を保持する腹筋群の筋力低下,骨盤胸郭間の相対的な可動域低下を代償すべき股関節筋群や体幹筋群の協調不全が示唆される.ただし,LCS患者は多様な脊柱のアライメント,立位・座位姿勢を示すため,今後は脊柱アライメントや姿勢との関連性,対照群である健常群の年齢等も考慮して被験者数を増やし,更なる分析を進めていく必要があると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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