理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-467
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骨・関節系理学療法
C2/3に対する関節モビライゼーションが頸椎分節可動域に与える影響
近藤 正太野村 健
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抄録
【目的】外傷や椎間板変性等により生じる頸椎の過可動性は頸部痛を引き起こし、さらには神経根症状を発生させる要因ともなるため、理学療法に於いてはローカル筋による分節安定性トレーニングが施行されている.一方では、過可動性の分節の近隣に低可動性の分節が見られるとされており、特にC2/3分節は臨床でも多く経験する.この様な症例に対して、低可動性を改善させる事が頸椎分節間、特に過可動性分節にどの様な影響を与えるかの報告はほとんど見られない.今回、我々はこの低可動性の分節に対し関節モビライゼーションを施行した結果、頸椎後屈自動運動時の各分節可動性に興味ある可動域の変化を認めたので報告する.
【対象】44歳女性.職業事務員.数年前より時々出現する頸部痛があった.それは特に頸部後屈により悪化した.現在に至るまで仕事上ほぼ1日パソコンの前に座ってキーボードを操作している.現在は頸部痛、神経症状は認めない.徒手による頸部の理学的検査では、頸椎のjoint play、mobility testでC2/3分節のgrade2の低可動性、C4/5,C5/6、C6/7分節のgrade4の過可動性が認められた.約10年前、交通事故による頸椎捻挫の既往歴がある.
【方法】今回の研究の趣旨を説明し同意を得た上で、放射線技師により頸部のレントゲン写真をC2/3分節の関節モビライゼーション施行前後に撮影した.肢位は椅子坐位にて腰部の生理的前彎を保った状態とし、撮影は矢状面から頸部中間位と自動運動での最大後屈位とした.そして、各分節間の可動域の計測はレントゲン写真をパソコンに入力し、その画面上で各椎体の後面に接する直線が交わる角度をC2-C7までの各上下の分節間で計測した.今回C2/3分節の治療に用いた関節モビライゼーションとして、joint distractionとglidingを併用した.
【結果】関節モビライゼーション施行前の自動最大後屈位での分節間角度では可動域の大きかったC5/6で19度C6/7は14度となりC2-C7間における総可動域の約67%をこれらの椎体間で占めていた.逆にC2/3に於いては2度でほとんど可動性は認めなかった.しかし施行後ではC2-C7間の総可動域が47度と施行前の49度とほぼ変化なかったが、C5/6、C6/7の2分節で約59.5%となり7.5%可動域が減少していた.反対にC2/3の可動域は5度と増加していた.
【考察】頸椎の中でC2/3分節は動きの異なる上位頸椎と下位頸椎の移行部であり、可動性の低下を含めた機能障害を来しやすいことは文献的にも述べられている.今回、C2/3分節モビライゼーションの施行後の自動的後屈運動で下位頸椎特に過可動性を呈する分節の可動域が減少した.このことは、C2/3分節の可動性が改善したことで、後屈運動に伴う始動が上位からスムーズに行われた結果と思われる.今後、頸椎分節の過可動性障害に対する徒手療法の方向性に示唆を与えるとものと思われ、安定化トレーニングと併用する事で効果的な治療が行えると考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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