理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-353
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骨・関節系理学療法
5回立ち上がりテストの有用性についての検討
谷口 千明森川 真也
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抄録

【目的】高齢者における簡易的な下肢筋力推定方法として30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)が利用されている.しかし,高齢になるほどCS-30をきついと感じており,短時間でのテスト結果のほうがより下肢筋力を反映する可能性があるとの報告もある.今回,我々はより簡易に実施可能な5回立ち上がりテスト(回数を規定し時間を測定する方法Timed stands test,以下,TST-5)の臨床的な有用性を検討し,若干の知見を加え報告する.

【方法】今回の研究趣旨を説明し,同意を得られた地域在住高齢者188名(男性53名,女性135名,年齢51~88歳,平均年齢69.8±8.0歳)を対象とした.測定項目は年齢,BMI,TST-5,等尺性膝伸展筋力,握力,Timed up & go test (以下,TUG),10m最速歩行時間,長坐位体前屈,Functional reach test(以下,FRT)とした.等尺性膝伸展筋力はアニマ社製μ-Tas F1を使用し,体重で除した値を採用した.年齢別に50歳代~80歳代の4つのグループに分けて検討した.統計学的検討には,Pearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数を用いた.また,TST-5を従属変数とし各測定により有意な相関のあった項目を独立変数として重回帰分析を行って関連性をみた.有意水準は5%未満とした.

【結果】TST-5の各年代平均値は,50代6.1±1.4秒(n=21),60代7.0±2.1秒(n=59),70代7.8±2.2秒(n=86),80代9.9±2.8秒(n=21)であった.TST-5は,FRTを除く測定項目全てと相関(p<0.01)を認めた.TST-5と各測定項目との相関関係は,等尺性膝伸展筋力(r=-0.53),10m最速歩行時間(r=0.49),長坐位体前屈(r=-0.20),FRT(r=-0.76),握力(r=-0.28),TUG(r=0.58),年齢(r=0.43)であった.重回帰分析により,TST-5に影響を与える因子は等尺性膝伸展筋力とTUG(p<0.01,決定係数0.46)であった.

【考察】CS-30は下肢筋力と関連を示すが、高齢になるほど経時的に相関が低くなるとの報告もある.また,健常成人を対象にTST3回,5回,10回を測定し,5回が最も膝伸展筋力と相関を示したとの報告もある.今回,高齢者においてもTST-5で運動機能との関連が示され,特に等尺性膝伸展筋力との関連性が高く,下肢筋力を反映する可能性が示唆された.TST-5は,高齢者にとってより疲労度の少ない,臨床現場でより簡便で有効な指標になると考えられた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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