主催: 社団法人日本理学療法士協会
【背景と目的】
痛みが生じると反射的に防御姿勢をとるように、痛みは筋をはじめ運動系に様々な異常を引き起こす.特に慢性的に痛みがある場合、継続する不活動状態などを原因とした新たな運動器の痛みが積み重なり、痛みの病態は複雑化する.痛み治療では、あらゆる痛みに混在する運動器の痛みをアセスメントすることが重要である.従来の運動器の痛みに関するアセスメント法は種々あるが、経験に左右されるものが多く、個々のセラピストによって不一致な結果を生み、また得られた所見が他領域の専門家への説得力に欠けることなどが問題であった.そこで我々は、熟練者の思考過程などを科学的に要素分解し、評価の工程を論理的に組み立てることで、全ての痛み患者における運動器(特に筋)の痛みを、初学者でも一定の手順に基づいて評価できるような科学的なアセスメント法の開発を試みた.
【方法】
検者間再現性の高いアセスメント法を目指し、以下の基準に乗っ取って作成した.(1)全ての痛み患者を母集団とし、二者択一方式(Yes or No)にて患者群を振り分けることで痛みの病態分類を行う.(2)患者の訴える最も痛みのある動作・姿勢を基盤としてアセスメントを構成する.
アセスメントの内容は問診、運動検査、触診、治療的評価で構成した.また、実際に患者を評価した結果をフィードバックし、アセスメントの修正・追加を繰り返した.
【結果】
運動器由来の痛みアセスメントとして、その全体の流れ(問診‐理学的検査‐治療的評価‐カンファレンス‐治療)を組み立てた.問診票はさまざまな問診情報を整理し、(1)理学的検査対象外を選別するための問診票、(2)理学的検査の基盤となる痛みの訴えを聞き取る問診票を作成した.理学的検査は“筋”をキーワードに、患者の訴える動作・姿勢による痛みが「筋活動によって生じる痛みかそうでないか(Yes or No)」を振り分けることから始め、二者択一方式にて痛みの出現パターンおよび病態まで分類した.さらに、試作のアセスメントによって実際の痛み患者を振り分け、治療的評価の結果を追うことでアセスメントの有効性を検討した.
本研究は、痛みの理学療法学研究会ワーキンググループとして行った.