抄録
【目的】
荷重位での膝内外反動作では膝回旋が伴うと言われているが、回旋方向に関して明確になっていない.さらに、臨床的にはKnee-in toe-outといった下肢の動的アライメントを呈する場合、下肢の外傷や障害を生じやすいと言われているが、膝回旋に対する足部肢位の影響を検討した報告は見当たらない.本研究の目的は足部肢位と膝内外反によりどのように膝回旋が生じるのかを明らかにすることである.
【方法】
対象は本研究の趣旨を説明し同意を得られた下肢に既往がなく、膝・足関節に著明なアライメント異常がない健常若年男子7名(平均年齢21.4±1.8歳)で、測定脚は全例右とした.運動課題は1歩(身長の40%)踏み出し、膝を内外反して5秒間保持させ、中3秒間の平均をデータ採用した.膝屈曲角を15°と40°、足部肢位が内外転中間位、10°内転位、10°外転位とし、組み合わせた6条件で測定した.計測は三次元動作解析装置(Motion Analysis社製EvaRT4.3.57)を使用し、赤外線反射マーカーは測定脚の大腿、下腿など合計39個貼付した.データ解析はSIMM(Motion Analysis社製)を使用した.統計学的解析は分散分析を用いた(有意水準p<0.05).膝回旋は足部中間位時の値を基準とし、内旋方向を正の値とした.
【結果】
屈曲15°での膝外反では足部中間位、内転位、外転位での膝回旋は各-2.7±3.1°、3.4±3.5°、-7.8±5.3°で全群間に有意差があり(p<0.05)、足部内転位では内旋していた.膝内反では足部中間位2.0±2.8°、内転位6.7±3.6°、外転位-1.7±3.4°で、足部内転位と中間位、および外転位(各p<0.05)に有意差があり、足部外転位では膝外旋であった.屈曲40°での膝外反では足部中間位、内転位、外転位で各-6.4±2.6°、0.5±2.1°、-10.7±3.2°で、全群間に有意差があった(p<0.05).膝内反では足部中間位0.9±1.6°、内転位4.8±2.9°、外転位-0.2±1.8°で、足部内転位と中間位、および外転位(各p<0.05)に有意差があり、膝屈曲15°と同様の傾向が見られた.
【考察】
足部中間位と外転位では従来言われているように膝外反位で外旋する傾向が見られたが、内転位では内旋しており、膝回旋は膝内外反だけでなく足部肢位により影響を受けることが示唆された.臨床場面ではさらに大きな足部肢位の違いや、荷重量の増加により、足部肢位による膝回旋の違いがより顕著に現れると予想される.今後は荷重量の増加など臨床場面により近づけた状況での足部肢位の影響を検討する必要があると考える.
【まとめ】
膝回旋は膝内外反だけでなく足部肢位によって有意に影響を受けることが示唆された.