理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-434
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骨・関節系理学療法
ジュニアテニス選手のストローク打法の違いによる腰椎および骨盤の運動学的差異
増田 清香宮下 浩二川野 大二郎井出 善広岡本 健
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抄録

【目的】ジュニアテニス選手において、腰椎分離症などの腰部障害は発生頻度が高いといわれている.近年、ボールの速度の上昇に対応するため、オープンスタンス打法が主流となっているが、この打法により腰椎への負荷は増加すると報告されている.しかし、実際のジュニアテニス選手においてオープンスタンス打法によるストローク動作を、腰椎および骨盤運動に着目し分析した報告は少ない.本研究は、ジュニアテニス選手のフォアハンドストローク動作について、クローズドスタンス打法(以下CS打法)とオープンスタンス打法(以下OS打法)を分析し、打法の種類による腰椎および骨盤の関節運動学的差異を明らかにすることを目的とした.

【方法】対象は、県大会以上の大会に出場経験のあるジュニアテニス選手17名(年齢13.0±2.0歳、テニス歴6.7±1.5年)とした.対象にCS打法とOS打法のストロークで打球させ、撮影を行った.インパクト0.5秒前からインパクト後0.27秒までを100%に規格化し、その位相での腰椎伸展角度と骨盤回旋角度、骨盤回旋角度変化量(骨盤回旋角度の最大値と最小値の差)を三次元動作解析にて算出した.CS打法とOS打法の各角度について、繰り返しのある二元配置分散分析を行った.また、OS打法におけるインパクト時の腰椎伸展角度と骨盤回旋角度および骨盤回旋角度変化量の相関について、Spearmanの相関係数を用いて解析した.危険率5%未満を有意とした.

【結果】OS打法は、CS打法と比較して位相の0~49%、57~100%の間で、腰椎伸展角度が有意に増加していた.また、OS打法におけるインパクト時の腰椎伸展角度と骨盤回旋角度(r=0.53)および骨盤回旋角度変化量(r=0.47)は、それぞれ有意な正の相関がみられた.

【考察】繰り返しの腰椎伸展運動は、腰椎関節突起間部や椎体への負荷となり、腰椎分離症や終板障害など、成長期の腰部障害の発生につながるといわれている.本研究の結果より、OS打法では、CS打法と比較してフォワードスイング期からインパクト後における腰椎伸展角度が有意に増加しており、腰椎前彎が強調された動作となることが示された.OS打法は、前方への踏み込みによる推進力が得られないため、ボールを打撃する際の反動として腰椎伸展が強まると考えられる.したがって、OS打法によるストロークの多用は腰部障害の要因の一つとなる可能性が示唆された.また、OS打法におけるインパクト時の骨盤回旋角度およびその変化量が大きいほど腰椎伸展角度が大きい傾向がみられた.したがって、インパクト時の骨盤回旋を強調しすぎないことは、腰椎への負荷が少ないオープンスタンス打法の指導を行う上で重要であると考えられる.今後は、骨盤とともに股関節との関連性についてさらなる研究を進めていきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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