理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-538
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内部障害系理学療法
3次元動作解析装置を用いた肺気量位変化の推定
野添 匡史間瀬 教史高嶋 幸恵青田 絵里松下 和弘和田 智弘眞渕 敏傅 秋光
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抄録

【目的】3次元動作解析装置で肺気量位変化を推定することが可能か否かを、その精度と誤差の発生要因から検討する.
【方法】対象は健常男性8名(年齢28.6±5.5歳).測定前には対象者に研究の趣旨を説明し、同意を得た.対象者にはCalaら(1996)の方法に準じて、体表面に86個の反射マーカーを取り付け、3次元動作解析システム(Motion Analysis社製Mac 3D System)を用いて、8台の赤外線カメラにてマーカー位置を測定した.同時に、測定精度を検討するために、呼気ガス分析装置(ミナト医科学社製AE300-s)の流量計を用いて肺気量位を測定した.データはサンプリング周波数100Hzで解析ソフト(Motion Analysis社製EVaRT5.04)に取り込み、反射マーカーの経時的な座標データを算出し、それらのデータから胸郭体積を算出した.測定は、安静時呼吸1分、呼吸数50回/分の多呼吸30秒、努力性最大吸気・呼気中の3つについて行った.また、誤差の発生要因を調べるために、Kenyonら(1997)の方法に準じて、胸郭体積を胸部、横隔膜部、腹部の3つの部位に分け、各部位の体積変化とそのパターン、それらの関係について検討した.
【結果】安静時呼吸中の胸郭体積から得られた肺気量位と流量計から得られた肺気量位の直線回帰関係をみると、係数1.03±0.04、切片-0.09±0.09ℓ、決定係数0.98±0.01、残差変動係数2.5±1.5%であった.多呼吸中では、係数1.00±0.04、切片0.01±0.08ℓ、決定係数0.98±0.01、残差変動係数2.5±1.3%であった.また、努力性最大吸気・呼気中は、係数1.03±0.03、切片-0.10±0.14ℓ、決定係数0.99±0.01であったが、残差変動係数は9.4±7.2%とやや精度が低く、対象者によってバラツキもみられた.残差変動係数が高値を示した例では、残気量位までの呼気中の腹部の凹みが、胸部、横隔膜部と比較して大きくみられる傾向があった.そこで、胸部、横隔膜部、腹部の各部の体積変化と、流量計から得られた肺気量位変化との直線回帰関係をみると、腹部体積変化との関係において特徴がみられた.残差変動係数が25.5、13.3%と大きかった2例では、腹部体積変化との直線回帰式の決定係数はr2=0.83、0.88とやや低値を示したが、残差変動係数が2.7、3.7%と小さかった2例では、r2=0.99、0.97と高値を示した.
【考察】胸郭体積から肺気量位を推定する精度は、安静時呼吸や多呼吸中では非常に高かった.しかし、努力性最大吸気・呼気中の胸郭体積変化において、努力性呼気中の腹部体積変化が他の部位に比べて相対的に大きく、流量計から得られた肺気量位変化との回帰式の決定係数が低い例では、誤差は生じやすくなる可能性があると考えられた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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