理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-541
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内部障害系理学療法
2型糖尿病患者の下肢筋量と筋力の関係
―多発性神経障害の合併の有無による比較―
野村 卓生浅田 史成中尾 聡志伊藤 健一淵岡 聡奥田 邦晴田上 光男宮下 和幸野村 誠久保田 昌詞大橋 誠
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抄録

【目的】部位にもよるが筋断面積は筋力と相関し,生体電気インピーダンス法による体成分分析装置で得られた筋量と筋力の間にも相関関係が認められる.糖尿病患者では,糖尿病多発性神経障害(Diabetic Polyneuropathy: DP)の合併,DPの進展に伴って筋力は低下する.その一要因として,DP合併患者は筋量相応の本来ある筋力が運動神経の損傷によって低下していると考えられる.しかしながら,運動療法が適応となる患者ではDP合併患者でも筋力の低下の程度は軽度な場合が多い.そこで今回,2型糖尿病患者において体成分分析装置で得られた下肢筋量と筋力との関係を筋量に対する筋力の比をふまえて,DPの合併の有無で比較検討した.
【方法】対象は運動療法の適応が判断された2型糖尿病患者22名(33~64歳)であり,うち簡易診断基準で判定されたDP合併患者は10名であった.内訳はDP合併群(一般特性: 男性8名,女性2名,年齢53.9±11.7歳,BMI 22.8±3.6kg/m2,HbA1c 11.3±2.7%),DP非合併群(一般特性: 男性10名,女性2名,年齢55.4±4.7歳,BMI 26.3±4.4kg/m2,HbA1c 9.7±2.0%)であり,一般特性について両群に有意な差は認めなかった.下肢筋量は体成分分析装置InBody 720(バイオスペース社製)を用いて測定した.下肢筋力はμTas F-01(アニマ社製)を用い,膝関節屈曲90度での等尺性膝関節伸展筋力(膝伸展筋力)と足関節中間位での等尺性足関節背屈筋力(足背屈筋力)を測定した.ボールを蹴る際の立脚側の下肢を軸足と定義し,軸足の筋量と筋力を検討した.解析は,DP合併群と非合併群の筋量,筋力を対応のないt検定を用いて比較した.また,筋量と筋力の比(筋力/筋量: 筋力筋量比)を求め比較した.本研究は大阪労災病院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】下肢筋量,膝伸展筋力(体重比),足背屈筋力(体重比)は,それぞれDP合併群で8.2±1.2kg,30.0±12.7kgf(0.46±0.16kgf/kg),14.7±4.9kgf(0.23±0.07kgf/kg),DP非合併群で7.8±1.2kg,37.5±9.0kgf(0.52±0.13kgf/kg),18.6±3.0kgf(0.26±0.06kgf/kg)であり,筋量および筋力の体重比にDPの合併の有無で有意な差は認めなかった.DP合併群および非合併群の膝伸展筋力の筋力筋量比はそれぞれ3.5±1.1,4.7±0.8,足背屈筋力の筋力筋量比はそれぞれ,1.8±0.5,2.3±0.4であり,両筋力筋量比ともにDP合併群がDP非合併群に比較して有意に低値を示した(p<0.05).
【考察】一般特性に有意な差を認めないDP合併群および非合併群において,筋量と筋力の間に有意な差は認めないが,筋力筋量比はDP合併群が有意に低値を示した.これは重症ではないDP合併患者の筋力低下の特徴を反映した結果と考えられ,糖尿病患者においては筋力筋量比をふまえることでDPが筋力に与える影響をより鋭敏に評価できることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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