理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-498
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内部障害系理学療法
呼吸器感染症に対する理学療法
宮澤 久美植村 健吾忽那 美穂子田中 幹人小林 美穂北尾 史緒里宇於崎 孝世古 祥起恵濃 雄一重城 博一
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抄録
【はじめに】
急性発症した脳血管障害患者等に対し理学療法を実施するうえで、廃用症候群を予防し、早期の離床を獲得することの重要性は当然のことである.しかし、呼吸器感染を併発し、理学療法プログラムを大幅に変更せざるを得ないことがある.当院では感染対策委員会にて様々な取り組みがなされ、そのなかで感染対策チーム(Infection Control Team 以下ICT)が2007年4月に発足し、呼吸器感染症患者に対し感染後早期からチームでのアプローチを行っている.そこで今回、入院後に呼吸器感染症を合併した患者に対してアプローチを行った結果を報告する.
【対象と方法】
2006年11月から2007年3月(T1)およびICT導入後の2007年11月から2008年3月(T2)までに脳血管障害等にて入院し、何らかの呼吸器感染症を合併した症例を対象に臥床期間、在院日数を比較した.T1における患者数は26名(平均年齢76.3±10.3歳、男性16名、女性10名)でその内死亡例は8名.T2における患者数は24名(平均年齢73.7±9.4歳、男性20名、女性4名)でその内死亡例は7名であった.
【結果】
T1での在院日数は、平均318.2±204.3日、T2での在院日数平均175.0±108.1日で有意に差が認められた(p<0.05).T1での臥床期間は、平均54.3±123.5日、T2の臥床期間は平均40.6±52.3日で有意差は認められなかった.
【考察】
当院でのICTでの理学療法士の役割は、呼吸器感染症を併発した患者に対して必要に応じ呼吸療法を行うことである.呼吸療法では、排痰・呼吸状態改善を目的に体位ドレナージ・呼吸介助・口腔ケアなどを実施している.ICTでは、各病棟の発熱患者をリストアップし、画像診断等の検査所見の評価、感染源の特定や抗菌薬を含めた治療方針を決定し、呼吸療法の必要性の有無・頻度などを毎回検討する.実際呼吸療法を理学療法士のみで行うのは困難なため、医師・薬剤師と投薬内容を検討し、看護師と投薬時間と訓練時間の調整、体位ドレナージ・ポジショニング後の吸引など24時間ケアを行っている.このようにICTの発足後、呼吸器感染症患者に対しチームでのアプローチを行うことで呼吸器感染症患者の重症化や再発を防止し、在院日数の短縮が得られたと考えられる.今後は、呼吸器感染症患者の早期離床が実現できるよう更なる対策が必要と思われる.
【まとめ】
ICTの発足により、在院日数短縮が可能となっている.呼吸器感染症患者に対してチームでのアプローチは必要不可欠であり、今後も積極的に行っていく必要があると考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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