抄録
【目的】Forresterの病型分類は心係数と肺動脈楔入圧より判定される病型分類であり、急性心筋梗塞症に対する治療指針として提唱され、現在では急性心不全や慢性心不全の治療指針としても応用されている.我々はForresterの病型分類の理学療法分野への臨床応用として、心疾患患者への投薬や治療内容から心係数と肺動脈楔入圧を推察し、左室機能や病態、重症度などを考察して離床プログラムに応用する方法を提唱してきた(理学療法ジャーナル40巻7号,555-564,2006).今回はこのForresterの病型分類についての心臓血管外科手術後の離床プログラムへの臨床応用の妥当性を検討した.
【対象】対象は当院で待機的に開心術をうけた38例(男性29例,女性9例,平均年齢61.7±11.1歳)とした.対象者は手術後順調に回復し10日以内に病棟内歩行が自立した例とし、歩行自立に10日以上要した負のバリアンスの発生や、何らかの理由で歩行自立に至らなかったパス逸脱例は除外した.手術後ADL達成日数は平均6.6±1.2日であった.
【方法】当院の心臓外科手術後の離床プログラムは、手術後1週間で病棟内歩行を自立させることを目標としたプログラムである.今回は医師より離床開始の指示を受けた後、可能な限り活動範囲を広げることを原則とし、医師や看護師と相談のうえ、積極的に離床プログラムを進めた.なお、ノルエピネフリン投与中やIABP装着中は中止とした.また、運動開始基準や運動中止基準は別に当院で定めたものを使用し、対象者本人の体調や訴え、希望を尊重し、無理やりに活動範囲を広げることのないように配慮した.離床プログラムの内容を「ベッド上」、「端座位」、「立位」、「歩行」に分類し、手術後の日数に寄らず、病棟内歩行が自立するまでの間、実施できた内容をForresterの病型分類内にプロットし、病型分類ごとのプロット度数について検討した.なお、対象者には本研究の趣旨を説明し、得られた臨床データについて本研究に使用することの同意を得た.
【結果】患者の状態がForresterの病型分類のsubsetIに当てはまる場合は97.3%が歩行練習を実施していた.また、患者の状態がsubsetIIに当てはまる場合は、29.7%が端座位を行い、32.4%が立位を行い、18.9%が歩行を実施していた.subsetIIIに当てはまる場合は、26.5%が立位を行い、67.6%が歩行を実施していた.そして、subsetIVに当てはまる場合は、32.4%が立位、14.7%で歩行を実施していたが、35.3%はベッド上の理学療法であった.
【まとめ】今回のForresterの病型分類を利用した心臓血管外科手術後の離床プログラムの実施についての調査では、手術後の日数の影響を考慮せねばならないが、各subsetにおけるプログラム内容実施率の目安を示すことできたと考える.