抄録
【目的】本研究は、訪問によるリハビリテーションを利用する要介護者の家族を対象として、介護方法や介護に関する情報提供を行い、介護者の介護負担感軽減や心理状態の向上が可能か検討した.
【方法】在宅にて訪問リハビリテーションを実施していた要介護者とその家族介護者を対象とした.対象者を要介護度により層化して無作為に対照群と介入群に割り付け、対照群14組、介入群15組を研究の対象とした.要介護者は男性17名、女性12名、年齢80.2±8.7歳、主介護者は男性4名、女性25名、年齢65.2±9.3歳であった.対象者には、本研究の主旨や目的を面接による口頭および書面にて説明し、同意を得た.なお、本研究は早稲田大学倫理審査委員会の承認を受けて実施した.すべての調査は、介入前および3か月後(介入終了直後)に実施した.要介護者の調査項目は、基本情報のほか、Barthel IndexおよびBedside Mobility Scaleとした.また、主介護者には、基本情報、短縮版Zarit介護負担尺度、日常生活活動における介助負担度、PGCモラール・スケールの質問紙調査を留め置き法にて行った.介入群に対しては、従来の訪問によるリハビリテーションサービスに加えて、家族介護者へ個別の教育介入を1回につき5分間程度実施し、その他のサービスは両群とも継続した.介入期間は3か月間とした.
【結果】ベースライン調査では、要介護者および介護者のすべての変数において、対照群と介入群の両群間で有意差を認めなかった.フォローアップ調査を完遂した介入群11名での合計介入回数は48回であり、ひとり平均4.4回(2~7回)であった.フォローアップ調査を完遂した家族介護者(対照群10名、介入群11名)について、群(対照群、介入群)と時間(ベースライン、3か月後)を要因とする二元配置分散分析を行った結果、主観的幸福感の指標としたPGCモラール・スケールが、対照群では低下したのに対して、介入群では向上を示し、有意な交互作用を認めた(F1,18 = 6.5, p = 0.02).なお、短縮版Zarit介護負担尺度は主効果および交互作用ともに有意ではなかった.
【考察】本研究の結果より、従来の訪問リハビリテーションサービスに付加して、1回5分間程度であっても家族介護者のために時間を割き、介護に関する学習や情報を提供する介入を行うことで介護者の主観的幸福感が維持され、家族に対する情報提供の必要性が示唆された.今後さらに効果的な支援方法を探り、より良い在宅での介護生活が延伸できるような支援体制の構築が求められると考える.
【まとめ】在宅で要介護者を介護する家族介護者に対する情報提供が、家族介護者の主観的幸福感に良好な影響を与えることが示唆された.