理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: S2-008
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生活環境支援系理学療法
高齢者に対する下肢敏捷性向上のための自転車を用いた軽負荷トレーニングの効果
越智 亮髙石 鉄雄下野 俊哉
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キーワード: 高齢者, 敏捷性, ペダリング
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抄録
【目的】
本研究の目的は,自転車エルゴメーターを用い,ペダル負荷を非常に軽く設定した軽負荷スプリントトレーニングが高齢者の下肢敏捷性にどのような効果を与えるか,下肢機能測定と表面筋電図を用いて検証することである.
【方法】
60歳以上の健常高齢者23名(男性10名,女性13名,年齢70.4±3.5歳)を対象とした.本研究は名古屋市立大学の倫理委員会に承認され,被験者に文書にて説明と同意を得た.被験者をトレーニング(以下Exerc)を行う群(以下T群)12名と行わない群(以下C群)11名に男女比を揃えて無作為に分けた.Exercには,自転車エルゴメーターPower Max Vを用いた.ペダル負荷は,各被験者の体重の1%(0.4~0.7kp)とした.Exercは,5秒間の最大努力ペダリングと,25秒間の休止期間を1セットとし,1日に10セットを行わせた.これを1週間に2回実施し,5週間で計10回行った.C群には5週間の実験介入期間において簡単なストレッチ運動を行わせた.両群とも介入前後において以下の下肢機能テストを計測した;1)等尺性膝伸展筋力,2)無酸素パワー,3)クランク最大回転数,4)TST(Ten Step Test:敏捷性),5)10m歩行時間,6)TUG.さらに,体重の2%ペダル負荷×50rpm(低回転条件),体重の1%ペダル負荷×100rpm(高回転条件)の2条件でそれぞれ外側広筋(VL),大腿二頭筋(BF)から表面筋電図を導出し,ピーク筋活動量,1サイクルあたりの平均筋活動量,および加算平均処理波形から1サイクル中の活動におけるon setとoff setを解析した.
【結果】
Exerc後,下肢機能についてT群では,無酸素パワー,クランク最大回転数が有意に上昇し(p<0.01),TST,TUGの時間が有意に減少した(p<0.05).筋電図の解析では,T群の高回転条件にのみ変化があった.Exerc後にVLは平均筋活動量が減少(p<0.01)し,BFはピーク筋活動量が増大した(p<0.05).1サイクル中のon setとoff setの解析では,VLにおいてExerc前ではクランク角度150°程度でoff setが出現していたが,Exerc後にoff setがクランク角度100°程度に出現していた.
【考察】
軽負荷スプリントトレーニングによって下肢パワー,敏捷性が向上する結果となった.Exerc後の大腿筋活動様相の変化は,高回転ペダリングに適応することでVLは1サイクルあたりの筋活動時間が短縮し,複数の筋活動の切り替えがスムーズになったこと,またBFのピーク筋活動の結果より,Exerc後にペダル引き上げ動作において積極的な膝屈曲を行っていることを示唆する.高齢者の下肢敏捷性の向上には,筋の活動と非活動の切り替えに関わる神経性要因が関与していると考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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