理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-187
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生活環境支援系理学療法
トイレ動作支援のための立位保持補助装置の開発と導入効果
村上 賢一藤澤 宏幸武田 涼子太田 靖大場 薫
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抄録
【目的】
福祉政策において要介護者の日常生活活動の自立は大きな課題となっている.特にトイレ動作や入浴動作に伴う移乗動作が生活自立の鍵となるが,それらの動作になんらかの介助を必要とする要介護者は多い.立位保持が自立していない要介護者を介助する場合,介護者の身体的負担が大きいのみならず転倒などの危険を伴う.また,トイレ動作や排泄行為の能力向上に向け身体機能およびバランス能力の改善を図る際には,運動療法の実施のみでなく,生活における活動量増加が必要となる.そのために生活場面で過剰な介助を改め,最小限の介助とすることが重要であり,現存の全介助型の介助機器ではなく,要介護者の残存する身体機能を生かし,且つ身体機能やバランス能力を改善させるような部分介助型の機器の開発が必要である.以上の経緯より,我々は先行研究にて介護職員(以下,CW)のニードやトイレ介助の現状を把握し,立位保持補助装置を開発した.本研究の目的は,開発した立位保持補助装置を使用したCWにアンケート調査を行い,装置使用感を明らかにすることである.
【方法】
対象者は,特別養護老人ホームAに勤務するCW10名とした.対象者には,調査の目的について十分な説明をし,書面にて承諾を得た.アンケート形式は肢選択法・無制限複数選択法・自由回答法を用い,CWのトイレ動作に対する負担度・トイレ介助状況・危険場面など13項目,装置使用感に関する11項目,全24項目から構成された.
【結果】
アンケート調査により,2号機を実際に使用しているCWは8名であった.その内,使用感について「使用しやすい」と答えた者は7名,「使用しにくい」と答えた者は1名であった.CWの6名は装置使用目的について「危険回避」と答え,その全員が本装置を使用することで危険回避できたと答えた.加えて,CWの身体的負担が軽減したという意見も得られた.使用しにくい点については,2名から回答があり,スリング着用による介護者への身体的負担と回答した者が1名,装置使用による介助時間延長と回答した者が2名であった. また,装置使用目的にトイレ動作向上と答えたCWは1名に留まった.
【考察】
立位保持補助装置を開発・導入し,アンケート調査を行った結果,介護者の身体的負担軽減,転倒への危険回避へ肯定的な意見が得られた.このことから,本装置を導入することでCWの身体的負担を軽減することができ,さらにはトイレ場面にて生じる転倒を回避できることが示唆された.しかし,要介護者の生活における活動量増加や身体機能を生かしたトイレ動作の向上・促進については,CWの意識を向けることができなかった.装置の仕様はこれらの目的に対し十分に対応できるため,要介護者の身体機能向上につなげられるように今後は装置の活用法について使用者と理解を深める必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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